今回は、「全ての子どもたちが平等に活躍する機会を持つ日本社会の実現」をビジョンに掲げ、児童養護施設の子ども達向けのアウトドアプログラムを実施されている、認定NPO法人みらいの森のマトキンスさんに話を伺ってきました。
- 児童養護施設が抱える社会問題を知りたい方
- 児童養護施設で暮らしている子どもたちの実情を知りたい方
- みらいの森のプログラムに興味がある方
は、ぜひ読んでいただけたらと思います!
プロフィール
【名前】
マトキンス萌々夏(塩津萌々夏)
NPO法人みらいの森 プロジェクトマネージャー
【経歴】
ヤング・アメリカンズにて表現教育 ⇒ みらいの森に携わりつつ、日本で表現教育の大学教員 ⇒ みらいの森の職員

NPO法人みらいの森とは
―――本日はよろしくお願い致します。まず、マトキンスさんが携わられているみらいの森について、軽くご紹介いただけますでしょうか?
はい。みらいの森は、児童養護施設の子ども達にアウトドアプログラムを通じて生きる力を届ける活動を行っている認定NPO法人です。主に年2回の長期宿泊型プログラムと毎月の日帰りプログラムを実施していて、子ども達にアウトドアプログラムを通じて社会性や責任感・勇気・リーダーシップなどの学びを届けています。
サマーキャンプに児童養護施設の子を招いてみた経験から、プログラムがはじまった
―――みらいの森は、どのようにして始まったのでしょうか?
元々は、「イングリッシュ・アドベンチャー」という会社のCSR活動が始まりでした。そこでは、アメリカで行われているようなサマーキャンプを日本の子どもたちに届けるという活動を行っていました。
そこで、現みらいの森の副理事「ジェフ」が、母が社会的養護の立場にあったこともあり、「自然が好き」という想いと「子ども達をサポートしたい へのギブを与えたい」という想いを掛け合わせて何かプロジェクトを始めたいやりたいと考えました。
「児童養護施設の子を招いてみてはどうか?」という話になり、イングリッシュアドベンチャーのキャンプに参加する子と児童養護施設で暮らしている子を交えて、サマーキャンプが行われました。その中で、「児童養護施設の子ども達に伝えたいことに特化して活動を継続したい」と感じました。
そして、社会的養護立場にいる子に特化したサマーキャンプを作ろうと決意し、2011年に児童養護施設の子ども向けの最初のサマーキャンプを実施しました。そこからプログラムを広げていき、みらいの森が立ち上がり、認定NPO法人となり、今に至るという流れです。

現在では、年間を通してプログラムを開催していて、累計参加者は4,300人以上、児童養護施設の職員の方の参加者も累計800人以上となっております。
アメリカで様々な環境の子どもたちと接するうちに、教育の楽しさを知った
―――マトキンスさんは、みらいの森設立当初から参加されていたのでしょうか?
いえ。私は元々ダンスを専攻していて、アメリカに拠点を置いている「ヤング・アメリカンズ」の一員として表現教育に携わっていました。そこには一般の子・社会的養護の子・移民の子などが参加していて、多様な環境の子ども達と関わる中で、教育の楽しさを知りました。
その後、社会的養護の立場にある子にフォーカスしたサマーキャンプがあることを知り、ボランティアとしてみらいの森に携わり始めました。日本で表現教育の大学教員をしつつ、みらいの森の活動に携わり、その後はみらいの森の職員となりました。
―――そうだったのですね。現在はみらいの森ではどのようなお仕事をされていらっしゃるのでしょうか?
現在はプロジェクトマネージャーという立場で、プログラムの設計に携わっています。例えば、サマーキャンプでどんな振り返りシートがあったら効果的になるかなという仕掛けを考えたり、卒業生とコミュニケーションを取ったりしています。私は今アメリカにいるので、出来ることは限られているのですが、その中でもオンラインで出来ることで携わらせてもらっています。
児童養護施設が抱えている社会問題とは
―――児童養護施設に日常で関わる機会はなかなか少ないですが、どのような問題を抱えているのでしょうか?
①:施設の子どもたちと、大人との結びつきが少ない
児童養護施設に暮らしている子どもたちは、それぞれに多様なバックグラウンドがあります。その中でも、多くの子ども達が虐待・ネグレクトを受けていて、一見するだけでは分からない深い傷を負っています。
施設の子ども達は、原則18歳の高校卒業のタイミングで退所する必要があります。ただ、彼らが社会に出ると「契約時に保護者の名前が必要」「就職時に緊急連絡先が必要」といった壁にぶつかることがあります。児童養護施設出身の子は、退所後に支えてくれる大人がいないため、日本社会で普通に生活していくことが難しいんです。そのため、退所後にホームレスになってしまう子や、夜職に勤めてしまう子もいます。
②:児童養護施設に関する問題を、多くの日本人が知らない
日本には今、600以上の児童養護施設があって、2万人以上の子ども達が施設で暮らしています。
―――そんなに児童養護施設の子がいるということを、多くの日本人は知らないと思います。
そうですよね。こうした問題をタブー化して言わないことこそが問題なのかなと思っています。私は今アメリカで暮らしているのですが、養子のいるご家族も身近にいますし、社会的養護に対してオープンに話されているように感じます。日本では、あえて喋らないようにしている風潮があるので、社会課題を「知る」所まで届いていないのかなと思います。社会的養護に対して、遠い存在だと思わずに身近な社会課題として受け止めてほしいと思っています。
児童養護施設で暮らしている子どもたちは、決して『可哀そう』ではない
また、施設で暮らしている子どもたちを「可哀そうだな」と安易に思わないでほしいと感じています。
たしかに子ども達の過去に寄り添うことは大事なのですが、「施設に入って良かった」と語る子もいます。施設に守ってもらえたから、立派な大人になれたという子も多いんです。
施設にいるからこそ色んなNPOと関われたり、プログラムを提供してもらえたり、独自ルートで就職できたりと、前向きな点もたくさんあります。だからこそ、ひとえに同情するのはちょっと違うなと思っています。

―――施設に入ることが救いになっている場合もあるのですね。
みらいの森で行っている事業内容とは
―――では、みらいの森で実際に行われている事業を教えてください。
児童養護施設の子ども達に、体験型・継続型のアウトドアプログラムを提供
みらいの森では、体験型・継続型のアウトドアプログラムを提供していて、プログラムを通して児童養護施設の子ども達に生きる力を届けています。
施設の子ども達は、18歳になったら原則退所しなければいけないため、社会で生きる力を身に付けなければいけません。生きる力は、コミュニケーション力・問題解決能力など、座学では学ぶことができないモノです。そのため、プログラムを通じてファイブバリュー「勇気」「思いやり」「リーダーシップ」「尊重する気持ち」「責任感」を得られるようにしています。
ちょっと勇気を出して高い所に登ってみようとか、これは責任感持って自分でやってみようとか、色んな事を体験してもらう。それによって、生きる力が身についていくのかなと思っています。

ただ、これがキャンプという非日常空間だけで行うことだと思って欲しくないので、継続的にプログラムを実施して、非日常で得た学びを日常に持って行けるような取り組みを実施しています。現在はサマーキャンプ以外にも日帰りの週末プログラムを行っていて、季節によってイースターのプログラムやクリスマス系プログラムなどを行っています。
プログラムを通じて、子ども達に新しい価値観を知ってもらう
また、施設の中は閉じた環境なので、価値観が固まってしまう子が多くいます。
例えば「ご飯の順番は施設で教わった通りじゃないとダメ」だと思っている子もいて、スタッフが「自分は甘い物が好きだからデザートから食べよ」とすると、衝撃的な姿に見えるんです。そんな選択肢あるんだ、そんなことする人いるんだ、というような外の文化をプログラムを通じて知ってもらいたいなと思っています。
施設の子ども達は、出会う大人が施設の職員か学校の先生くらいで、非常に限られています。そのため、将来の夢に、職員さんか学校の先生しか出てこない、といった課題があります。そのため、もっと世界には多くの選択肢やロールモデルがあることを、プログラムを通じて色んな大人と話して知ってもらいたいです。

最近だと、施設を卒業して社会人になった子が、身近なロールモデルになってくれています。
―――みらいの森で育った子が、社会に出て、みらいの森のプログラム運営側として携わり、次の世代に伝えるという良い循環が発生しているのですね。
そうですね。元々は卒業生の子たちの居場所になればいいなと思って始めたのですが、実際は彼らが後輩の子たちに学びを提供してくれていて、魔法のような化学反応だなぁと思っています。
みらいの森の今後の展望
―――ここまでありがとうございました。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
はい。まずは各世代に特化したプログラムを実施したいと考えています。今は小中学生合同でプログラムを行っているのですが、小学生向けの内容が中学生には物足りないこともあるので、各世代ごとに最適なプログラムができたらいいなと思っています。
また、施設の職員さんとの関わりも大切にしているので、職員さんにとってももう一つの居場所になれたらいいなと思っています。職員さんが1人の人間として楽しめる場であり、職員同士のコミュニティの場にもなるような環境にしていきたいと考えています。昨年、20年間児童養護施設の職員として働いていた方がみらいの森にジョインしてくれたので、その方を筆頭に職員さんとの関わりを強化していきたいと思います。
4/24, 25に皇居にてウォーキングイベントを開催しますので、ぜひみなさんご参加いただければ嬉しいです。施設の子のことを知る機会にもなりますし、子ども達にとっても多様な大人と交流できる機会にもなるため、ぜひ奮ってご参加いただければと思います。

まとめ:みらいの森のプロジェクトを通じて、多くの児童養護施設の子ども達が社会に羽ばたいていた
今回は、認定NPO法人みらいの森のマトキンス萌々夏さんに、児童養護施設が抱える社会問題とみらいの森でのアプローチについてお伺いさせて頂きました。
今回インタビューをしていて印象的だったのが、マトキンスさんがとても楽しそうにお話をされていることでした。児童養護施設と聞くと暗い雰囲気になってしまいそうですが、実際は施設にいるからこその前向きなことも多くあり、みらいの森の活動もその1つなのだと理解しました。私もウォーキングイベントに参加して、施設の子ども達との交流を行ってみようと思いました。
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