SDGs目標1「貧困をなくそう」を徹底解説!企業の取り組みや私たちにできることも紹介

今回は17あるSDGsの項目の1つ目である、「貧困をなくそう」について解説していきます。世界の貧困の現状はどのようになっているのか、日本にも貧困はあるのか、政府や組織が行っている解決に向けた取り組み事例などを詳しく解説していきます。

目次

SDGsとは?17の目標から成る、持続可能な社会を目指すための行動計画

SDGsとは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略称で、国際連合が2015年に採択した国際的な取り組みです。SDGsは、世界をより持続可能な社会にするための2030年までの行動計画であり、経済、社会、環境の側面にわたるさまざまな課題に対処するために作られました。

SDGsには『17の目標』『169のターゲット』『232の指標』が定められています。主なテーマとしては、貧困削減、飢餓撲滅、健康増進、教育の普及、ジェンダー平等、クリーンエネルギーへの移行、気候変動対策、平和と正義の推進などが定められています。

今回解説する「貧困をなくそう」は、SDGs1つ目の目標です。

貧困をなくそうとは?定義や意味、目標などの基本知識を解説

ここからは「貧困をなくそう」という項目について、定義や7つのターゲット、SDGsに「貧困をなくそう」がなぜ必要なのかなどを解説していきます。

貧困をなくそうとは?

「貧困をなくそう」とは、SDGs1つ目の目標です。ここでは「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」を目標に掲げています。

日本にいると気付きませんが、世界には飢餓や餓死が日常となっている国があります。北朝鮮やソマリア、イラクなどの国では、全人口の35%以上が栄養不足に苦しんでいます。また、シエラレオネでは生まれた子供の11.5%が5歳未満で亡くなっています。(ユニセフ 子どもの死亡率に関する指標)下記の表を見ても分かる通り、世界の最も豊かな国と最も貧しい国では、約281倍もの経済格差が存在しています。

順位国名単位(US$)
1アイルランド145,200
2ルクセンブルク142,490
3シンガポール133,890
9アメリカ80,030
38日本51,810
191中央アフリカ共和国1,130
192ブルンジ891
193南スーダン共和国515
2023年 世界の年間1人あたり名目GDPランキング

世界の貧困国では、児童労働や紛争、民族虐殺などが今でも行われていて、子供たちは教育を受けられず、飢餓に喘いでいます。こうした世界中の貧困をなくすことを目標にしているのが、SDGs1の「貧困をなくそう」です。

貧困をなくそうの7つのターゲット

「SDGsとは?」の項目で説明した通り、SDGsの各目標にはそれを達成するための複数のターゲットが設定されています。「貧困をなくそう」の項目には、以下の7つのターゲットが設定されています。「1.1」「1.2」などの算用数字のターゲットは貧困をなくすための定量的な目標を示していて、「1.a」「1.b」などの英数字のターゲットはこの目標を解決するための手段を示しています。

1.12030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
1.22030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。
1.3各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。
1.42030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。
1.52030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。
1.aあらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。
1.b貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。
農林水産省 SDGsの目標とターゲット

SDGsでは、これら7つのターゲットが達成されることで、SDGs1つ目の目標である「貧困をなくそう」が解決されると意味しています。

なぜ持続可能な社会を作るため「貧困をなくそう」の達成が必要なのか?

SDGsには全部で17つの目標がありますが、「貧困をなくそう」がなぜ必要とされているのでしょうか?それは、SDGsが「誰一人取り残さない」を基本理念として掲げているからです。

SDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)では、多数の困窮者を救おうとするあまり、少数派の人々への貧困対策が後回しにされていました。ここで生まれた格差が、少数民族の迫害や難民問題、テロの増加に繋がってしまいました。貧困は、様々な社会問題が発生する原因となるため、持続可能な社会を作るためには貧困をなくすことが不可欠です。そのため、SDGsでは「誰一人取り残さない」ことを掲げ、すべての人の貧困を無くすことを目指しています。


また、貧困問題の大きな問題点として「貧困の連鎖」という問題があります。貧困の連鎖とは、貧困の環境で育った子供はまた貧困となり、それが連鎖し続けるという現象です。

例えば、親が貧困で子どもに教育費を払えない場合、その子供は高単価な仕事にこなす事ができず、貧しい仕事に従事することになってしまいます。そこで貧しい生活を送ると、そのまた子供も貧しくなってしまうという、負のループに陥ってしまうという課題があります。

このように、貧困は次世代に連鎖するため、早急に貧困を断ち切ることが他の社会問題・SDGsの項目を達成する鍵として大きな意味を持ちます。

貧困の種類、絶対的貧困と相対的貧困とは

SDGs1つ目の目標は「貧困をなくそう」ですが、そもそも『貧困』とはどういう状態のことを指すのでしょうか?ここでは、貧困の定義や種類について解説していきます。

絶対的貧困と相対的貧困について

まず、貧困には「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類があります。

絶対的貧困とは、衣食住・医療・基礎教育が保障されず、人として最低限の生活を送ることができないレベルの貧困のことです。私たちが一般的に貧困と聞いて想像するような、アフリカや東南アジアの貧しい子ども達の状況は、絶対的貧困と呼ばれています。

一方で、日本に住んでいて、衣食住は担保されているが貧しい生活を送っている方もいらっしゃると思います。そうした、住んでいる国の水準の中で貧しい生活水準の貧困のことを相対的貧困と呼びます。日本では、お金がなくて高校に通えない家庭や、シングルマザーの家庭などが相対的貧困の例としてよく挙げられます。

絶対的貧困とは

世界銀行は絶対的貧困層(国際貧困ライン)を「1日$2.15未満で生活している人」(2022年9月時点)と定義しています。つまり、食費や家賃・水道光熱費などすべて含めて1日約322円で生活している人たちになります。この人たちは、世界の中でも極度の貧困層に該当します。

世界の子どもの6人に1人は、この国際貧困ラインを下回る生活で暮らしています。アフガニスタンのカブールに住むフレシタちゃんは、現状の生活を以下のように話しています。

パンを一切れ食べられる日もあるし、全然食べられない日もあるの。金属のかけらを拾って売って、それでやっとパンを一斤買えるの。

日本ユニセフ協会 YouTube

2023年現在、世界で最も貧しい国は南スーダン共和国で、次にブルンジ、中央アフリカ共和国、ソマリア、コンゴ民主共和国の順となります。どれもサブサハラアフリカ地域と呼ばれる、サハラ砂漠以南のアフリカの国です。

相対的貧困とは

世界銀行は相対的貧困層を「世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態のこと」と定義しています。日本では年収の中央値は396万円なので、その半分の年収198万円以下で生活をしている日本居住者の方が、相対的貧困層に該当します。

日本は全人口の15.4%が相対的貧困層と、先進国の中でワースト1位となっています。シングルマザー・シングルファザーの家庭では、実に44.5%が相対的貧困層に該当しています。(厚生労働省調べ

世界の貧困問題を徹底解説!今の現状や貧困の原因、行われている取り組みは?

ここからは、世界で起きている貧困問題について解説していきます。世界の貧困で取り上げられる問題は、主に絶対的貧困に関するものになります。食べる物が無かったり、学校に行けなかったり、子ども兵士として強制労働させられたり、、、そうした世界の貧困事情について解説していきます。

世界で今起きている貧困問題とは?

世界の絶対的貧困層は6億5900万人とされていて、その約83%がサブサハラアフリカと南アジアに住んでいます。

これらの地域では、コンゴ紛争やミャンマー内戦などの紛争が頻発していて、生きていくのもままならない状態です。また、エイズやマラリア・結核などの感染症も深刻で、この地域の死亡原因の1位~3位は感染症によるものです。さらに、干ばつや洪水・砂漠化などで食糧も不足していて、3億人以上が飢餓状態にあります。

ソマリアでは2017年に干ばつにより、60万人が極度の飢餓状態に陥りました。コンゴ民主共和国では、武装勢力同士の対立によって、1280万人が食糧不足に陥っています。ミャンマーではロヒンギャの人々が迫害により国を追われ、1日1食の米とレンズ豆のみの食事で生きています。こうした貧困が、今なお起きているというのが世界の現状です。

ミャンマーからバングラデシュに逃れたロヒンギャ難民たち

貧困家庭では子ども達は貴重な労働力とされ、農業や水汲み・家事などを手伝っているため、教育を受けることができません。そのため、貧困から抜け出す方法を学ぶことができず、その次の世代もまた貧困になるという貧困のループに陥っています。

ただし、国際機関による世界の取り組みにより絶対的貧困層の人数・割合は、近年減少傾向にあります。このまま絶対的貧困層が0人になると、「貧困をなくそう」の達成度が100%になります。ゴールはまだまだ遠いですが、着実に極度の貧困の人数は減ってきています。

1990年2015年
貧困率36%10%
貧困層の数18億9500万人7億3400万人
世界銀行 世界の貧困率および貧困層の数

なぜ世界では貧困がなくならない?貧困がなくならない原因5つ

世界では私たちが想像できないほどの貧困状態にある人々が大勢存在します。では、なぜ世界では貧困が発生し続けているのでしょうか?貧困が無くならない原因として、主に以下の5つが挙げられます。

①:十分な教育を受けられていない

教育は貧困から抜け出す大きなファクターとなります。読み書きができれば仕事の種類は増え、英語が話せれば外国人向けに事業が可能となり、機械や工学ができれば製造業に従事することができます。

しかし、世界の貧困地域では子どもが教育を受けられない割合が高いです。下記の表は、初等教育後期修了率が低い国を並べたものですが、すべてサブサハラアフリカの国々で占められているというのが世界の現状です。

国名
ウガンダ39%43%
リベリア36%33%
ニジェール35%23%
ブルキナファソ32%29%
南スーダン31%18%
チャド30%23%
ギニアビサウ29%25%
ユニセフ 初等教育後期修了率

なぜこうした地域の子ども達は、十分な教育を受けられないのでしょうか?その理由として、以下の3点が挙げられます。

  1. 家族に食糧を食べさせるために、子どもの頃から働く必要があり、学校に行く時間が取れない
  2. 学校まで徒歩で数時間かかり、学校に通うことが困難
  3. 親が学校に通ったことがなく、親が学校に通わせる意義を理解していない

また、南スーダンのように女の子の就学率が特筆して低い国もあります。これらの国では、「女子は結婚と家事・育児が仕事で、教育を受ける必要はない」といった考えが根強く残っていて、こうした慣習も貧困の課題となっています。

②:紛争・内戦

紛争や内戦が起きている国では、経済活動を行うことが困難になり、労働力も不足し貧困が発生します。日本では民族・宗教での争いはほとんどないですが、世界では民族・部族の違いや宗教・宗派の違いで紛争・内戦が発生しています。

アフリカのルワンダでは、ツチ族とフツ族による内戦により、1990年~1994年の5年間で100万人が犠牲となりました。この内戦により、ルワンダ国民の約20%が死亡し、農地は荒れ果て、200万人以上の難民が発生しました。また、イエメンではイスラム教シーア派とイスラム教スンニ派による内戦状態が現在でも続いていて、飢えやコレラなどで多くの方が犠牲となっています。宗教や民族による争いは、簡単には解決できない難しい問題です。

③:高単価な仕事が行えない

貧困国が多いアフリカには、金やダイヤモンド・石炭・天然ガスなどの豊かな天然資源が多く存在します。その中には、EVに欠かせないリチウムや、半導体に欠かせないレアアース、原子力発電に欠かせないウランなど、非常に高価な資源も多く産出されます。ではなぜ、豊かな天然資源がありながら、これらの地域は貧困のままなのでしょうか?

その理由として、これらの天然資源を採掘する技術がその国にないことが挙げられます。天然資源の採掘は先進国の企業が行うため、利益の多くを先進国の企業が持っていってしまいます。また、一部の分配された利益は政府が利権として押収するため、国民には還元されません。そのため、豊かな天然資源がありながらも、国民にその恩恵が還元されていないのです。

また、チョコレートやコーヒー栽培などのプランテーション農業は、貧困国で多く行われています。日本でコーヒーを飲むと1杯500円程度ですが、その内現地の農家に渡るお金はわずか6円ほどです。なぜこれだけ安い金額しか現地の人に渡らないかと言うと、焙煎や精製といった高度な技術を現地の人が持ち合わせていないからです。現地の人々に技術があれば、高単価な仕事を受けることができるようになり、貧困や重労働から解放されることができます。

しかし、高単価な仕事を行うためには、高度な知識が必要なため、教育が必要となります。つまり、教育が行き届いていないと、単純労働から逃れることはできず、貧困から抜け出すことが難しいというジレンマとなっています。

④:政治腐敗・賄賂・汚職

国民が極度の貧困状態にある国では、えてして政治腐敗や賄賂、汚職が蔓延っています。実際、先進国やNPO・NGOは貧困国に対し、十二分の金額の支援を行っています。それでも今現在貧困がなくなっていないのは、支援の多くが賄賂や汚職に吸い取られているからです。

例えば、「NGOの支援物資を送った際に、税関職員に止められ、通したければ賄賂を支払うことを要求された」「学校建設のために渡した支援金が、教育省の職員に取られていた」といった事例は頻繁に発生しています。外務省に勤務していた原ゆかりさんも、寄付をしても汚職に取られてしまう現状を嘆いています。

どれだけ支援を送ろうとも、まずはその国の政治腐敗や汚職体質を改善しないことには、現地の貧困層の生活改善には届きません。

⑤:自然災害

近年は地球温暖化による大規模な台風・干ばつ・砂漠化などが頻発しています。こうした自然災害によって農作物が取れなくなり、貧困になるケースも存在します。2023年には、トルコ・シリア地震やモロッコ地震、南スーダン洪水、南東アフリカでのサイクロンなど、様々な災害が発生し、その都度難民が発生しています。自然災害では地域一帯が荒廃してしまうため、農業を生活の軸としている貧困層には大きな打撃となってしまいます。

また、近年は蝗害という、バッタが農作物を食べ尽くしてしまう災害も発生しています。アフリカでは、蝗害によって1日で35000人分の農作物が被害にあっており、現地の農民の食糧の多くが食べ尽くされてしまっています。

現在行われている、絶対的貧困をなくすための取り組み

上記の原因が複雑に絡み合い、世界では貧困が発生し続けています。これらの貧困をなくすために、国や政府・NGOなどはどのような取り組みを行っているのでしょうか?ここからは、絶対的貧困を無くすための国や政府・非営利組織・企業の取り組み事例について解説していきます。

絶対的貧困を無くすための政府や国の取り組み

日本政府は世界各国の発展途上国に「政府開発援助(ODA)」という解決方法で、資金や技術の提供を行っています。日本も終戦後の貧しい時期に、世界から約18億ドル(現在価格で約12兆円)の支援を受けていました。この資金援助のおかげで、日本の高度な経済発展が実現できたため、日本は率先して世界の貧しい国に資金の援助を行っています。

例えば、紛争が長期化して教育が受けられないイエメンの子ども達に対し、学習教材の提供と衛生設備の改善を行っています。また、アフリカの農業生産性を高めるために、農業技術の普及支援も行っています。さらに、アフリカではHIV/エイズの支援のために100億円の「感染症対策無償資金」を提供しています。これらの支援活動を現地で行う派遣員として、JICAのメンバーが現地で活動を行っています。

ODAは日本の取り組みだけでなく、世界の取り組みとして広く行われています。他の先進国の政府も、ODAによって貧困の国々を支援しています。ODA総額の多い国は以下の通りです。

順位国名途上国援助総額(2021年、単位は100万ドル)
1アメリカ47,805
2ドイツ33,272
3日本17,634
4イギリス15,712
5フランス15,506
6カナダ6,303
7イタリア6,085
8スウェーデン5,934
9オランダ5,288
10ノルウェー4,673
外務省 途上国援助(ODA)総額の多い国

絶対的貧困を無くすための国際機関の取り組み

国連食糧農業機関(FAO)では、持続可能な農業開発の支援を行っています。全世界で2000件の農村開発投資や農業開発支援を行っています。国際農業開発基金(IFAD)では、農村に住む人々の貧困克服のための融資を行っています。ユニセフが今行われている取り組みとしては、世界150カ国以上の貧困な子ども達に支援を行っています。

また、世界銀行では貧困削減と持続的成長の実現に向けて、途上国の政府に対して技術提供・融資などを行っています。2022年には年間1044億ドルの資金を投入し、マダガスカルでの道路整備やカーボベルデでのワクチン無償提供などの貧困問題の解決策を実施しました。

絶対的貧困を無くすためのNGOの取り組み

国際NGOセーブ・ザ・チルドレン

セーブ・ザ・チルドレンは子どもの権利保護を行うNGOです。世界120カ国で保健・営業・教育支援や、自然災害・紛争における緊急人道支援などを行っています。

5歳未満の子どもの慢性栄養不良率54%のベトナム北部では、家庭菜園の普及や養鶏指導を行い、食糧確保の支援を行いました。また、現地の行政関係者と会合を行い、子供の栄養不足改善の目標を達成しています。

ウガンダでは、現地の農家に効果的な農法の研修を行い、収穫量が5倍になった世帯も生まれています。また、乳幼児への栄養摂取研修を行い、乳幼児の死亡率改善にも取り組んでいます。

アフガニスタンで子どもの医療支援を行っている様子

国際NGOシャプラニール

シャプラニールは日本で創設された貧困支援を行うNGOです。子どもの教育支援や児童労働の削減、フェアトレード活動、防災事業などに取り組んでいます。

バングラデシュでは、1日中家事使用人として働く少女たちに教育を行い、彼女たちが自由な職につけるよう活動しています。また、児童労働が子供の権利を剥奪しているという認識を、地元の人々に広める啓発活動も行っています。

ネパール南部では、毎年雨季に洪水が発生し農作物や家畜に深刻な被害が発生していました。そのため、シャプラニールと現地の方が協力し、堤防の設置やハザードマップの作成を行っています。

ネパールのマハナリ村では、児童労働削減活動を行っている
シャプラニール=市民による海外協...

絶対的貧困を無くすための企業の取り組み

森永製菓株式会社:1チョコfor1スマイルキャンペーン

森永製菓はカカオ生産国の子ども達支援のため、1つ商品を購入すると1円をカカオ生産国へ寄付する活動を実施しています。寄付されたお金は、NGOのプラン・インターナショナルとACEを通じて、フィリピンでの小学校建設やカメルーンでのトイレ・井戸の設置、ガーナでの学用品支給などに使われています。

1チョコfor1スマイルキャンペーンは、これまで15年に渡って行われていて、2022年時点で約3億円の寄付をカカオ生産国に行いました。持続可能なチョコレート生産のために、SDGs1「貧困をなくそう」に取り組んでいます。

カカオ生産国の子ども達の様子

第一三共株式会社:貧困国での巡回医療サービス

第一三共は日本の製薬会社で、医薬品の製造やワクチンの開発などを手がけています。第一三共は「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことをパーパスにしており、サステナビリティ活動としてプラン・インターナショナルと協力し貧困国への医療支援を行うことで、SDGs1「貧困をなくそう」に取り組んでいます。

貧困国の地方では、病院まで数時間かかるため通院できない患者が多くいます、そのため、移動診療車を使った巡回診療プロジェクトを実施し、世界の医療格差を無くす取り組みを実施しています。これまではタンザニアとカメルーンでプロジェクトを実施し、現在はミャンマー各地を巡回しながら、子供の成長測定や栄養不良の子ども向けカウンセリングを実施しています。

タンザニアで使用した移動診療車

日本の貧困問題を徹底解説!今の現状や貧困の原因、行われている取り組みは?

ここからは、日本で起きている貧困問題について解説していきます。日本の貧困で取り上げられる問題は、主に相対的貧困に関するものになります。実は、相対的貧困に関しては日本の現状はかなり問題点が多く、日本の課題がここに集約されているといっても過言ではありません。ここからは、相対的貧困に関する日本の現状や原因、解決のために行われている具体的な取り組みを解説していきます。

日本で今起きている貧困問題とは?

日本では今、格差が非常に深刻となっています。年収1000万円を超える人が4.6%いる一方、年収400万円以下の人が55.1%となっています。所得格差を表す当初所得ジニ係数では、2021年時点で0.57と比較的高い値を示していて、G7では最悪の相対的貧困率となっています。この格差の拡大が、近年の日本の課題と言えます。

オリックス銀行 令和2年分民間給与実態統計調査結果

日本の相対的貧困層には、以下の3つの特徴があります。

  • 高齢者に多い
  • ひとり親世帯に多い
  • 地方に住む人に多い

相対的貧困の高齢者は、食べ物に困り配給を受けて生活していることが多いです。実際、都庁の下で毎週土曜日に行われている困窮者向け食糧配布会では、9割以上の参加者が高齢者というのが今の現状です。

東京新聞 都庁前での食料配布会の様子

相対的貧困のひとり親世帯では、子供の教育費に問題を抱えています。習い事や塾、修学旅行に行かせてあげるお金はなく、高校・大学には奨学金を借りなければ進学できません。また、子ども達は家庭を助けるために、アルバイトや家事を手伝ったりするため、十分に勉強をする時間が取れない場合が多々あります。そのため、満足な教育を受けられなかった子は高単価な仕事に就けず、また貧困になってしまうという貧困の連鎖が発生しています。

ではなぜ「高齢者」「ひとり親世帯」「地方に住む人」に、相対的貧困層が多いのでしょうか?ここからは、日本で相対的貧困が発生している原因を解説していきます。

なぜ日本では貧困がなくならない?日本で相対的貧困がなくならない原因3つ

上記で、「高齢者」「ひとり親世帯」「地方に住む人」に相対的貧困層が多いと説明してきました。これらの人々に相対的貧困者が多い理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 年金受給額の減少
  • 非正規雇用の増加
  • 高単価な仕事が都市部に集中している

①:年金受給額の減少

高齢者が受け取る国民年金の満額は、2000年度から減少傾向にあります。2023年度には月約1400円の増額に転じたものの、物価上昇率に追い付いていないのが現状です。また、厚生年金の平均受給額も、2000年度から継続して減少傾向にあります。

国民年金の平均受給額
厚生年金の平均受給額

高齢者の一部の方々は年金のみでの生活を送っているため、物価上昇と年金受給額減少によって相対的貧困に陥る事例が増えています。

②:非正規雇用の増加

母子世帯の母の平均年間収入は、令和2年度時点で272万円と平均的な給与の約59%しかありません。なぜひとり親世帯の収入が少ないのかというと、ひとり親世帯の約38%が非正規雇用だからです。(厚生労働省 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告

ひとり親世帯の場合は、幼稚園の送り迎えや子どもの看病などを働く親が行わなければいけません。そのため、毎日固定の時間働く正規雇用という形態での労働が難しく、比較的融通の利く非正規雇用で働く場合が多いです。しかし、非正規雇用で働くと給料は低くなるため、ひとり親世帯が相対的貧困になる割合が多くなっています。

③:高単価な仕事が都市部に集中している

地方に住む人が相対的貧困に該当しやすい理由は、「高単価な仕事が都市部に集中している」ためです。東京や神奈川、大阪などの都市部には、金融業やIT・商社など高単価な大企業が多数存在しています。東京の平均月収は36.4万円で、全国一位です。

一方、地方には農業や漁業などの第一次産業や中小企業が多く、高単価な仕事は比較的少ない傾向にあります。青森の平均月収は24.5万円で、東京の67%に留まっています。(厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査)こうした都会と地方の賃金格差が、地方に相対的貧困層が多い原因を作り出しています。

現在行われている、相対的貧困をなくすための取り組み

ここまで、日本で相対的貧困が起きる原因を解説してきました。相対的貧困はあまり知られていませんが、この問題を解決するため様々な日本での取り組みが行われています。では、これらの相対的貧困をなくすために、国や政府・NPOなどはどのような具体的な取り組みを行っているのでしょうか?ここからは、相対的貧困をなくすための今行われている取り組み事例について解説していきます。

相対的貧困を無くすための政府や国の取り組み

国は税金による所得の再分配という解決方法で、相対的貧困を無くそうとしています。例えば、食糧配布を行うNPOに助成金を渡し、困窮者向けの食糧配布事業を行ってもらったり、地方の第一次産業に補助金を出して生活支援を行ったりしています。また、困窮者の生活を守る最後の解決策として、生活保護制度を用意しています。

ひとり親世帯向けには、「マザーズハローワーク」というひとり親に最適な仕事を斡旋するサービスを無料で提供しています。また地方自治体によっては、ひとり親の家庭向けに「ひとり親家庭住宅手当」や「ひとり親家族等医療費助成制度」などの手当を給付しています。ただ、こうした日本の取り組みは、相対的貧困当事者にあまり知られていないという問題点があります。

相対的貧困を無くすためのNPOの取り組み

認定NPO法人Learning for All

Learning for Allは、「子どもの貧困に、 本質的解決を。」をミッションとした、子どもの貧困解決を行っているNPO法人です。相対的貧困による貧困の連鎖は、子どもに十分な教育を行う事で断ち切ることができます。そのため、すべての子ども達が教育を受けられるよう、不登校の子どもへの教育や、児童虐待の相談、親が日本語を話せない子どもへの日本語教育などを行っています。

居場所づくり事業では、不登校や家庭の居場所のない子ども向けの居場所を提供しています。また、学習遅延や日本語が苦手などの理由で学校での授業が難しい子ども向けに、個別指導も実施しています。

さらに、貧困家庭向けに週5回の子ども食堂や、無償での食糧品の配布、保護者への支援・悩み相談も手掛けています。

学習が遅れている子ども達向けの担任制指導プログラムの様子

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい

もやいは「日本の貧困問題を社会的に解決する」をミッションに貧困者支援活動を行っているNPO法人です。ネットカフェに泊まりながら派遣社員として働く若者や、年金を受け取れない高齢者、刑務所から出所して仕事がない人など、様々な貧困状態の人の問題を解決する活動を行っています。

1つ目に、貧困者向けの入居支援事業を行っています。宅建業の免許を持った専門の方が、その人に最適な住居を探してくれます。また、貧困者が住居を借りる際に課題になるがちな連帯保証人を、もやいが代わりに引き受けています。

2つ目に、生活に困っている方の相談に乗り、解決を目指す生活相談事業を行っています。その人が利用できる制度を探したり、制度の利用方法の案内などのサポートをしています。

もやいは新宿の都庁下にて、貧困者向けのフードパントリーも行っている
あわせて読みたい
認定NPO法人 自立生活サポートセンター・もやい もやいは「日本の貧困問題を社会的に解決する」ために活動しているNPOです。

相対的貧困を無くすための企業の取り組み

株式会社ジモティー:ひとり親支援キャンペーン

地元の掲示板でおなじみのジモティーは、全国のひとり親家庭の約45%が利用しているサイトです。そのため、ひとり親家庭を支援する活動を継続的に行っています。

協賛企業からの支援物資をひとり親家庭に提供したり、ひとり親家庭に優先して物を譲るキャンペーンを行ったりしています。高価な家電や出費がかさむ食品などを、ひとり親家庭に優先して譲る仕組みを導入する事で、SDGs1「貧困をなくそう」に対する日本での取り組みを行っています。

ひとり親の方向け提供会の様子
株式会社ジモティー
2/18より「ひとり親応援キャンペーン」を開始します! | 株式会社ジモティー 株式会社ジモティージモティーのスタッフがお届けする、ジモティーに関する様々な情報提供のページです。こんにちは、ジモティーのブログ担当者です。今回は、2月1...

証券会社:こどもサポート証券ネット

三菱UFJモルガン・スタンレー証券やゴールドマン・サックス証券、エース証券など32社(2020年10月時点)の証券会社が共同で、SDGs1「貧困をなくそう」に取り組んでいます。

各証券会社がこどもサポート証券ネットを通して、米やレトルト食品、日用品などを貧困支援を行うNPO法人に寄付を行っています。また、アスリート社員を児童養護施設に派遣したり、社員による子どもたちへのプログラミング教室を開催したりと、社内人材を活用した貧困支援も行っています。

こども証券サポートネットの仕組み

貧困をなくすために私たちができることは?

ここまで、日本・世界の貧困の今の現状や原因、行政や企業が行っている貧困対策などを解説してきました。この記事を読み、貧困をなくすため何か取り組みを行いたいと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そんな方向けに、ここからは私たち個人でも貧困をなくすためにできることとして、以下の5つを紹介します。

①:貧困支援を行っている団体に寄付を行う

まず私たちができることとして、寄付・募金を行う事があります。NPO・NGOの貧困支援活動の多くは収益性がないため、寄付を原資として行われています。私たちがこうした団体に寄付を行うことで、間接的に貧困問題の解決に繋がります。また、認定された非営利団体に寄付を行うことで、寄付額分の所得税を控除してもらうことができます。

寄付先の選び方としては、自分で団体のHPやSNSなどで活動内容をしっかりと見て、寄付金が貧困解決に使われているのかを注視しましょう。また、各団体行っている活動内容は異なるため、自分の価値観にあった団体に募金を行うと良いと思います。寄付先に迷っている方は、「絶対的貧困を無くすためのNGOの取り組み」「相対的貧困を無くすためのNPOの取り組み」の項目で紹介した法人をチェックしてみてはいかがでしょうか?

②:貧困支援につながる商品を選んで購入する

次に私たちができることは、商品を購入する際に貧困支援につながる商品を選ぶことです。商品を購入すると、その金額の一部が貧困支援に使われる商品があります。その例をいくつか、以下に記載します。

  • レッドカップキャンペーン:赤いカップのマークがついた商品を購入すると、その売上の一部が世界の貧困支援に寄付される
  • トムスのOne for One:トムスのシューズを1足購入すると、貧困地域の子ども達にシューズが1足寄付される
  • コメダ珈琲のフェアトレードコーヒー:通常のコーヒーより50円高いフェアトレードコーヒーを注文すると、その50円がフェアトレードとしてコーヒー農家に還元される

この際に大切なのが、「無理に貧困支援につながる商品を購入しようとしないこと」です。自分に必要がない商品を購入すると、結果使う事がなく廃棄することになってしまいます。それよりは、「通常の商品」「貧困支援につながる商品」の選択肢があった際に、貧困支援につながる商品を選ぶことが、私たちが貧しい国のためにできることです。

③:貧困支援のボランティア活動を行う

私たちができることの3つ目は、貧困支援のボランティア活動です。絶対的貧困解決のためのボランティアとしては、「現地での活動の手伝い」「日本から支援物資の輸送の手伝い」「スキルを活かしたプロボノ活動」などがあります。相対的貧困解決のためのボランティアとしては、「子ども食堂のお手伝い」「貧困の子ども達向けの勉強支援」「スキルを活かしたプロボノ活動」などがあります。

ボランティア活動に携わる大きなメリットとしては、実際に自分が貧困問題解決に携わっているという感覚を強く得られることです。直接貧しい国のためにできることをしたいという方には、ボランティアをすることが最適だと思います。ボランティア活動は個人からでも申し込みが可能です。貧困支援のボランティアに参加するには、NPO・NGOの公式サイトやボランティア募集サイト(Activo)から申し込みを行いましょう。

④:貧困支援を公約に掲げている政党・政治家に投票する

私たちができることの4つ目は、選挙で投票をすることです。政治家や政党の中には、貧困支援を重点に置いている所もあります。多くの人がそうした所に投票をすれば、日本での貧困支援が拡充していきます。

特に、国内の相対的貧困を解決するには、政府の介入が不可欠です。そのためには、私たちがきちんと選挙に行って投票を行うことが大切です。

⑤:貧困問題について知る・学ぶ

最後に最も大切な私たちができることは、貧困問題について目を背けず学び続けることです。

日常的に生きていると、貧困問題があるということを実感しにくいと思います。しかし、私たちの近くには、貧困で満足のいく教育を受けられていない子どもや、毎日1食でしのいでいる若者がいます。また、私たちが購入しているチョコレートやコーヒーは、貧困国の安い労働力で作られたものかもしれません。

こうした相対的貧困・絶対的貧困という問題があることを理解し、これらの問題について意識を向けることが、問題解決への一歩となります。今回貧困問題を知ったことをきっかけとして、これからも自分たちにできることとして、ニュースやネットなどで貧困問題の情報を定期的に学び続けてもらえると嬉しいです。

まとめ:SDGs目標1の「貧困をなくそう」には、まだまだ多くの取り組みが必要

今回は、SDGs1つ目の項目である「貧困をなくそう」について解説してきました。今回の内容を簡単に纏めます。

  • 様々な社会問題を解決するためには、貧困をなくすことが大切
  • 「貧困をなくそう」には7つのターゲットがある
  • 貧困には、絶対的貧困と相対的貧困が存在する
  • 世界では、飢餓や医療・教育不足などの絶対的貧困が発生している
  • 日本では、食費を切り詰めたり進学を諦めたりといった相対的貧困が発生している
  • 貧困を無くすため、政府やNPO・企業などが多くの取り組みを行っている
  • 私たちも貧困を無くすためにできることがある

貧困は多くの社会問題が発生する原因となりますが、まだ達成度は高くないのが今の現状です。ゴールはまだまだ遠いですが、自分たちにできることから少しづつ世界の貧困を無くしていき、2030年までに貧困をなくすことを目指していきましょう。

ソーシャルエッグでは、他のSDGsの項目の解説や、サステナブルな事業者の紹介などを行っています。もしよろしければ、他の記事も読んでみてください。

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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