株式会社里山エンジニアリングは、里山の薪炭林を材料とした蓄電池を開発している、東北大学発のスタートアップ企業だ。
日本では近年、里山の放棄問題が社会課題となっている。高齢化と過疎化によって手入れが行き届かない里山が増え、獣害やヤマビルの発生、森林の保水力低下などの問題が発生している。昨年、秋田県で熊被害が急増したことも記憶に新しい。
株式会社里山エンジニアリングはこの里山問題を解決する手法として、ウッドバッテリーを開発した。ウッドバッテリーとは、従来里山で用いられてきた薪炭林を基にした蓄電池だ。東北大学で長年研究されてきた「両有機レドックス電池」技術を使い、金属を一切使用しないウッドバッテリーの開発に成功した。
ウッドバッテリーは環境に優しいだけでなく、鉛蓄電池と同等の容量・1000回の充放電後も95%の容量を保持・拘束充放電可といった実用性を兼ね備えている。現在はまだ研究段階のため価格的優位性は高くないが、資源を国内で豊富に調達できる点から、今後は価格低下が見込めるという。
また、里山エンジニアリングでは植林や間伐などの里山資源管理、林業再興による地域活性化にも取り組んでおり、ウッドバッテリー事業を通して里山全体が盛り上がることを目指している。第7回「日経ソーシャルビジネスコンテスト ファイナリスト」にも選出されており、その事業内容と社会的意義から今後間違いなく注目が高まる企業だと考えている。
コメント