「一瞬のときめきから、長期的な地球環境保護に繋げていく」一般社団法人Heart forインタビュー

今回は、「ときめき」を軸に環境問題に切り込む、一般社団法人Heart for代表松倉さんにお話を伺ってきました。

  • エシカルかつおしゃれな物を探している方
  • エシカルな商品・サービスを展開しようと思っている方

はぜひ読んでいただけたらと思います!

目次

『知らない』ことが環境問題を引き起こしていると感じ、一般社団法人Heart forを創業

【名前】
松倉 杏奈
一般社団法人Heart for代表
農業ガールズコレクション代表

【経歴】
青森県出身 ⇒ 岩手大学農学部卒 ⇒ モデル業・青森県三沢市観光大使・PR業・地方創生 / 地域マーケティング業

下谷

今回は、ウニの殻をアップサイクルしたアクセサリー制作やエシカルモデル事業などを手がけている、一般社団法人Heart for代表の松倉さんにお話を伺わせて頂ければと思います。

本日はよろしくお願い致します。

松倉

こちらこそよろしくお願い致します。

下谷

ありがとうございます。

松倉さんは、モデルから非営利法人の設立といった異色の経歴を持たれておりますよね。どのような経緯で、現在のお仕事を始められたのでしょうか?

松倉

私は青森県三沢市という、森や自然が豊かな土地で育ちました。小さい頃はおじいちゃんが虫取りや魚捕りによく連れて行ってくれて、動物や自然に親しみをもって暮らしてきました。

そこで、身の回りにある自然環境や現在起こっている環境問題についてより深く学びたいと思い、岩手大学の農学部に進学しました。

松倉

大学時代には、青森県三沢市の観光大使「MISAWAクイーン」に選出して頂き、モデル業を始めながら、三沢市や青森県のPR活動も行いました。

MISAWAクイーンとして活動されている際の様子
松倉

また、フィリピンでの国際ボランティアに携わったことが、自分にとって大きな転機となりました。私が訪れたフィリピンの村では、従来はバナナの葉や竹などを包装や容器として使っており、それらは自然の力ですぐに分解されるため、山や川に捨てても綺麗な環境が保たれていました。

しかし、プラスチックを主とした化学製品が普及し始めた後も、住民たちはこれまでの感覚で捨ててしまっていたため、どんどんとゴミが溜まり自然環境の悪化を引き起こしてしまいました。

松倉

このような状態を目にした時、「『知らない』ことが環境問題を引き起こしているのではないか?」と気付き、人々のライフスタイルや思考を変容させる(気付かせてあげる)ことが、環境を守る事に繋がると考えました。

そこで、環境問題をより広く伝えるために、私の想いに共感してくださる仲間と共にエシカルモデルとしてのPRやソーシャルイベントなどを行いながら、2023年9月に一般社団法人Heart forを設立しました。

「”ときめき” で地球を救う」一般社団法人Heart forとは

下谷

一般社団法人Heart forは、どのようなコンセプトでどのような事業を行われているのでしょうか?

松倉

はい。Heart forでは「”ときめき” で地球を救う」を理念としています。

「ときめき」をメインテーマに据えて、ウニの殻を用いたジュエリー「雲丹華(うにはな)」や、廃棄されてしまう野菜をリブランディングした「シンデレラ野菜」、エシカルモデルの育成などを行っています。

地球を救うために「ときめき」を重視するワケ

下谷

松倉さんは、なぜときめきを重視されているのでしょうか?

松倉

それは、近年の消費者、とくに若年層が一瞬のときめきから商品を購買していると考えているからです。

今後の社会を担っていく若年層ですが、消費行動に関しては、環境配慮・エシカルを第一に考えられる人はまだごく一部であり、どちらかというと「かわいい!」「かっこいい!」「欲しい!」という一瞬のときめきが購買を引き起こしていると考えています。

「環境のために良い物を買おう」というエシカル消費はまだまだ日本では十分に普及しておらず、実際は「かわいいから買おう」「おしゃれだから買おう」と思って購入される場合がほとんどです。そのため、そういった「ときめき」を通じて地球の現状を知ってもらいたいと考えました。

下谷

最近は、SNSやInstagram広告・Tiktok広告など、数秒の広告から「これ欲しい!」と衝動的に感じることが多いですよね。

松倉

まさにその通りで、まずは「ときめき」が得られるようなプロダクトや活動を行い、そこを通して環境問題に関心を持ってもらいたいと考えています。

松倉

「時間とお金に余裕があるから活動しよう」「環境に良い商品だから買ってもらおう」という入口では、顧客層が環境問題に関心のある人や金銭的に余裕がある人に限られ、社会全体としての持続性やインパクトに欠けてしまいます。

「地球を救う」という大きな目標達成のために、エシカル抜きでお客さんに欲しいと思って頂けるような、価値のあるときめくものを作っていく必要があると考えています。その上で行っている事業が、次の3つになります。

シンデレラ野菜、農業ガールズコレクション:”ときめき”を重視した農事業

松倉

まず1つ目が、”ときめき”を重視した農業事業です。

シンデレラ野菜事業では、フードロスとなってしまう規格外の有機野菜を、「灰をかぶったみすぼらしいシンデレラが、本当はとても美しい女性だった」という話になぞらえ、「シンデレラ野菜」としてリブランディングしています。

松倉

取り扱っている野菜は無農薬の有機野菜で、皮まで美味しく食べられるものです。見た目に傷が付いていても中身は美味しい、まさにシンデレラのような可愛い野菜たちなので、ぜひ味わってみて下さい。

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松倉

農業ガールズコレクション事業では、農園を舞台としたファッションショーを開催し、都市・消費者⇄農村・農家をつなぐインタラクティブな新しい世界感を創造しています。

松倉

ショーの舞台を農園にすることで、より多くの方に生産現場を実際に見て触れていただくことができ、農産物や生産者さんを含めた「農」全体に魅力を感じていただくことを目的としています。

ショーの出演モデル達は、PRだけでなく栽培や商品開発のお手伝いまで手がけています。

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雲丹華:ウニの殻をアクセサリーにアップサイクル

松倉

2つ目が、雲丹華事業です。雲丹華(うにはな)は、海の磯焼け問題をジュエリーを通して知って頂くための商品です。

松倉

以前より、ビーチクリーンアップ活動やシーグラスを使ったアクセサリー制作など、海に関わる活動を行ってきました。海に関する事業者さんと様々お話していく中で、九州にあるウニノミクス株式会社さんに出会いました。

そこで、ウニが海藻を食べ尽くしてしまう「磯焼け」という問題を知りました。ウニは繁殖力が高く寿命も長いため、海底の海藻を食べ尽くしてしまいます。また、磯焼け状態のウニは身入りがなく、獲っても収益にならないため、漁師さんも捕ろうとしません。その結果、ブルーカーボンが減少し、海中の生態系が崩れてしまっています。

松倉

ウニノミクスさんでは、この磯焼けしたウニを陸上養殖して適切な餌を与えることで、身入りのあるウニを養殖しています。ここで、ウニの殻が活用されず大量に廃棄されているとお伺いし、ウニの棘を使ったアクセサリーを作ろうと考え、雲丹華が生まれました。

下谷

磯焼け問題は、砂漠化や森林減少などと比べると、知名度が低いですよね。実際、私も昨年函館にて初めて磯焼けを現地で見たのですが、想像以上に水面下で問題が進行していると感じました。

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ウニと磯焼けについて詳しく知りたい方はこちらへ
松倉

そうなんです。海の中の環境破壊は知りづらい所で、まだまだ情報が少ないと感じております。そこで、雲丹華を通して、磯焼け問題を知って頂ければなと思っております。

下谷

雲丹華のジュエリーには、どのような特徴があるのでしょうか?

松倉

はい。雲丹華にはウニの棘を使っているのですが、ウニの棘は黒と濃紫の間のような、光沢のあるシックな色合いを持っています。光が当たると色が透き通るなど趣のある素材であるため、高級感を感じて頂けます。

松倉

そのため、落ち着いた大人な色合いを好む女性の方から、好評を博しています。また、男性からの評判も高く、紳士服に合わせたワンポイントアクセとしてご利用頂いております。

現在は1ピース1000円、2ピースセットが2000円で販売をしております。

雲丹華-unihana- powered by BASE
雲丹華-unihana- powered by BASE 海底の砂漠化、磯焼け問題を解決する過程で生まれた雲丹棘ジュエリー『雲丹華』エシカルで上品な世界でひとつだけの宝物。
下谷

なるほど。男性からの需要もあるのは、ウニの質感ならではの特徴ですね。

エシカルモデル:環境に良いものだけをPRするモデル

松倉

3つ目が、エシカルモデル事業です。こちらは2023年から始まった活動で、「エシカルなモノやサービスを広めるモデル」のエシカルモデルを育成・輩出するプロジェクトです。

松倉

私は元々モデル業界に所属していたのですが、モデルは依頼主に「使われる」職業でした。発注者が宣伝したい商品のために、ツールとして使われるのがモデルであり、それが環境に悪い商品であろうがモデルは商品を綺麗に見せなくてはいけません。

そこに違和感を覚え、エシカルなことをしっかりと理解し・行動し・発信するモデルが必要だと感じ、エシカルモデルの認定制度を始めました。

松倉

エシカルモデルと認められるには、SDGsやエシカルに関する知識をしっかりと勉強し、実践を行う必要があります。また、エシカル消費をリードする存在として、一般の方にエシカルの知識を広めていく必要もあります。

平和を祈るPEACEDAY COLLECTION 2023
ファッションロスを訴える余剰在庫ファッションショー
松倉

このように厳格に審査を行うことで、エシカルモデルに信頼性が生まれ、エシカルに取り組む企業がエシカルモデルを選んで使ってくださると考えています。

「どんな商品でもモデルとしてPRする」のではなく、「エシカルな商品のみをPRする」モデルとして、代えがたい存在になると考えています。

下谷

インフルエンサーマーケティングの一環に「この人が使っているのなら安心だ、買おう」という購買行動がありますが、それと同じように「エシカルモデルの方が紹介しているのなら、環境に良いものだよね、買おう」という形で購買行動を引き起こすということですね。

松倉

そうですね。今回同席している鈴木聖菜ちゃんは、エシカルモデルの1期生です。

鈴木

はい。私はミスアースジャパン2023という環境問題をテーマにしたミスコンに参加し、そこで松倉さんと出会いました。杏奈さんはミスアースジャパンにてSDGs講師をされていて、その講義を受ける中で、SDGsにとても興味を持ったと同時に、自分にも何かできることはないのかということを感じました。

そこで、杏奈さんに「エシカルや環境問題をもっと知りたい・活動したい」とお伝えし、エシカルモデルを目指すことになりました。エシカルモデル認定制度を通して、エシカルに関する知識を杏奈さんから直接教えて頂けるだけでなく、ビーチクリーンや雲丹華の制作・宣伝などの実体験を得られていることに魅力を感じております。

松倉

聖菜ちゃんは元々モノづくりが得意だったので、雲丹華の制作を一緒に手がけています。

「社会を変えるエシカルモデルを目指してみたい!」と思った方は、ぜひお気軽にご連絡下さい。

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まとめ:一瞬のときめきから、長期的な地球環境保護に繋げていく

街を行き交う中で、「これが欲しい」「あれ買ってみようかな」と思うのは、理性での判断よりも感性での決定の方が多いと思います。そのため、「地球に優しいプロダクトだから」という理性的なアプローチではなく、「かわいいから」「おしゃれだから」といった感性的なアプローチから、地球環境の保護に繋げていくHeart forさんの試みには、大きな強みがあると感じました。

ソーシャルエッグでは、他にもエシカルな商品の紹介や、社会に良い活動をしている方へのインタビュー記事などを他にもたくさん用意しています。社会に良い事業に興味がある方は、ぜひ他の記事も読んでみて下さいね!

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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