子どものリハビリを遊びで支援!「デジリハ」を手掛ける仲村佳奈子さんにインタビュー

今回は、『リハビリをアソビに変える』デジタルリハビリツールを手掛ける株式会社デジリハの仲村さんに、障害を持つ子どもとリハビリの向き合い方について伺ってきました。

  • 障害のリハビリに取り組んでいるお子様がいる親御様
  • 新たな活動を取り入れたいと考えている、放課後等デイサービスや児童発達支援施設の方
  • 障害のある方と関わる方

はぜひ読んでいただけたらと思います!

※ 本記事では「障害・障がい・障碍」をすべて「障害」という表記に統一しています。あらかじめご留意ください。

目次

プロフィール

【名前】
株式会社デジリハ ゼネラルマネージャー
仲村 佳奈子

【経歴】
大学病院、小児施設やNICUでの勤務 ⇒ JICA海外協力隊でグアテマラ ⇒ University of Leads 障害学コースで修士課程 ⇒ NPO法人 Ubdobe参画 ⇒ 株式会社デジリハとして分社化し起業(現在はイギリス在住)

下谷

本日はインタビューをお受け頂き、誠にありがとうございます。では、初めに仲村さんの経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか?

仲村

はい。私は小児の分野を診たいと思い、理学療法士の資格を取得し、大学病院で4年間働いていました。そこでは、NICUや医療的ケアが必要な子供たちの施設にも携わっていました。

その後、青年海外協力隊でグアテマラへ行き、理学療法士としてだけではなくイチ現地スタッフとしても活動していました。帰国後、NPO法人Udobeにて、現在のデジリハに関わるようになりました。

デジリハとは「デジタルアート×センサー」のリハビリツール

下谷

ありがとうございます。

では、次に、デジリハさんの事業内容についてお伺いさせて頂ければと思います。

仲村

はい。デジリハは、「デジタルアート×センサーを使ってリハビリを遊びにしよう」というコンセプトのリハビリツールです。

障害のあるお子さんが無理やりリハビリをやらされるのではなく、主体的に楽しくリハビリに取り組めるようになるような療育ツールを開発しています。

手の動きをトラッキングして遊べるリハビリゲーム
仲村

デジリハには、作業療法士や理学部療法士などの資格を持っている、医療・福祉の専門職が多数携わっています。また、デジリハのメンバーには、障害のあるお子さんを抱えたメンバーが多くいます。

そのため、障害を抱えた子どもたちのことを、きちんと理解した上でサービスを開発しています。

仲村

デジリハのツールにはセンサーが埋め込まれていて、このセンサーを使ってリハビリを行います。お子さんの特性に合わせたセンサーの遊びを選ぶことで、そのお子さんにあったリハビリテーションの提供を行っています。

また、センサーの感度やオブジェクトの大きさ・色などは自由に調整できるようになっていて、その子に最適なリハビリツールを提供することが可能です。

障害を持った子どもを育児するなかで、楽しくリハビリができるツールが必要だと感じ、創業

下谷

デジリハさんの試みは、まさにデジタル社会の現代の取り組みですよね。どのようなきっかけで、デジリハを創業されたのでしょうか?

仲村

デジリハのサービスが生まれた背景には、創業メンバーの加藤の娘さんが生まれつき福山型筋ジストロフィーを患っていたことが関係しています。

デジリハ創業メンバーの加藤さんと、加藤さんの娘さん
仲村

彼女は赤ちゃんの頃からリハビリを行っていました。リハビリというのは、大人だったら前の自分を比較して「頑張ろう!」と思ったり、周りの人に迷惑をかけないようにという思いで頑張れます。

しかし、障害を抱えた子供にとって、リハビリはモチベーションがなく非常に難しいものです。彼女は毎回のリハビリで泣いて辛い思いをしていたため、「子供たちが自分からやりたいって思える楽しいリハビリって存在しないのかな」という思いからアイデアを得て、本事業が始まりました。

子供たちが自らリハビリを行おうとする!?デジリハの強みとは?

下谷

きつく辛いリハビリや作業療法を、子ども達がやりたいと思わないのは当然ですよね。デジリハさんでは、どのようにして子ども達が主体的にリハビリをやりたいと思うようにしているのでしょうか?

仲村

デジリハでは、まず子ども達に興味を持ってもらうことを大事にしています。

障害が重いため玩具を動かしても興味を持ってくれない子や、発達障害で注意が散漫な子などに、音や視線・動きなど五感をフルに使って「これは楽しいよ」とアピールし、注意を惹かせます。すると、デジリハをやってみたいと次第に思うようになり、それがリハビリに繋がります。

下谷

最初の興味を惹けるのは、子ども向けリハビリツールとしては大事ですね。その後、デジリハを触った子供は、またもう一度やりたい!となるのでしょうか?

仲村

それは、人によりけりですね。知的な障害がない小児の場合、一発目から使い方が分かり楽しんでもらえることが多いです。一方、障害が重い方の場合は、何回も何回も繰り返して楽しさを知ってもらうことが大切です。

仲村

触るタイプのセンサーの場合、タブレットが普及してるため早くに楽しんでくれる子が多いですが、アイトラッキングセンサーは楽しみが分かるまで難しいため、時間がかかることが多いです。ただ、どんなセンサーであっても繰り返し使って、お子さん自身が使い方を理解していくことで、リハビリを楽しめるようになる設計にしています。

デジリハの実際の使用例を紹介!

下谷

ではここからは、実際にデジリハさんのツールを利用されている事例をお伺いできればと思います。

現在デジリハさんのツールは、個人で使われる方よりも施設や事業者さんが利用されている事例が多いと伺いました。実際に施設では、どのようにデジリハを使っているのでしょうか?

仲村

例えば腕を上げることが難しいお子さんの場合は、壁にオブジェクトを投影して触ってみたり、車いすの子たちの集団療育として身体を動かすアプリが使われていることなどがありますね。

発達障害を抱えた子向けの施設では、走ったりジャンプしたりとアクティブな遊びを入れたり、没頭しやすい特性を活かして集中力が必要なリハビリゲームを行ったりしています。

仲村

施設によっては、週に何日か「デジリハの日」を用意してご利用頂いている場合や、「毎日何分デジリハをする」といった形でご利用頂いています。

デジリハサービス展開場所(一例)

  • 放課後等デイサービス/児童発達支援LigLig
  • 茨城県立水戸特別支援学校
  • 麻生リハビリ総合病院
  • 琉球リハビリテーション学院
  • 千葉県千葉リハビリテーションセンター
  • 千葉西総合病院
施設でのデジリハの利用風景
下谷

なるほど。どの施設でどのアプリを使うか、というのはデジリハさんの方で決定するのでしょうか?

仲村

まずは、その施設でどんな課題を解決したいのか、ということをヒアリングさせて頂きます。次に、デジリハ側から使用するアプリや活用方法をご提案させて頂き、そこから一緒に使い方を議論していきます。

デジリハはあくまでもリハビリツールなので、お子さんやユーザーさんがやりたいことに合うよう、一緒になって遊びのアイデアを考えていきます

仲村

また、各施設の方々と一緒になって、リハビリテーションに最適な療育アプリの開発も行っています。

施設の方から「リハビリのためにこういう動きをさせたいんだけど、それができるアプリってないですか…?」といった声を伺いますので、その動きができるようなデジリハアプリの企画・開発を行い、現場に最適なアプリを提供できるよう心がけています。

下谷

遊びが主目標ではなく、リハビリのために遊びを活用する、という療育ですからね。

同じ動きやアプリを使われていると、お子さんが飽きてしまうといったことはないのでしょうか?

仲村

そうですね、遊びのルールを変えたり、難易度を変えたり、競争をさせたりすることで、継続的にリハビリを続けてもらえるようにしていますね。

生まれつき障害を持ってる子供は、失敗体験が多くて自分に自信が持てない子が多いです。そのため、成長して難しいことも自分ができるようになっていると実感できると、そこから楽しくリハビリを続けて頂けています

下谷

それはとても良いことですね!

デジリハでは、「リハビリをやってる」という感覚よりも「楽しいからやっている」という子の方が多そうに感じますね。

仲村

「リハビリやってる」と思っている子はほぼいないと思います

子どもたちも楽しく笑顔で行ってくれています。実際に放課後等デイサービスでは、デジリハはリハビリや作業療法といった名目ではなく、生活の中での遊びの要素にリハビリのエッセンスを追加するという名目で使われていますね。

障害を持った子供と関わる際には「絶対にできる」と思うように心がける

下谷

仲村さんは、障害を持った子どもと接する際に心がけていることは何かありますか?

仲村

私は、その子には「絶対にできるはず」と思って関わるようにしてます

障害が重い子ほど「この子どうせ分からないよね、見えてないよね、聞こえてないよね」と思われてしまいます。しかし私は、「工夫すればきっとできる」「できないのは環境や働きかけが適切でないからだ」と考えるようにしています。デジリハでは「『できる』を生み出せるようにするには、私たちはどうすれば良いだろうか?」という考えを大切にしています。

障害は私たちの近くに存在していることを知ってもらいたい

下谷

ここまでありがとうございました。

では、最後に一言、仲村さんのほうからお言葉を頂いてもよろしいでしょうか?

仲村

デジタルと聞くと「魔法のようにスイッチを付けたら何でも解決する」というイメージの方が多くいらっしゃいます。しかし、実際はアプリを使いこなしていくんだ!」という姿勢が大事だと思います。

デジタルは、その人の特徴に合わせてアレンジできる部分に大きな強みを持っていると思います。そのため、様々な試行錯誤やアレンジ可能な要素を入れているので、使う側も楽しみながら色んな挑戦をして頂ければと思っています。

仲村

また、ゆくゆくは誰もが歩けなくなりますし、事故や病気になれば障害者になることもあります。障害やリハビリは意外とすぐ近くにある世界なんです。そう考えると、リハビリも障害も違った世界ではなく身近な所にあると思ってもらえたらいいなと思います

下谷

自分の周りでは障害を持った方と関わる機会が多くないですが、実は障害はすぐ近くにある世界なのですね。

仲村

日本は特別支援学校の数が増えていて、所謂「分断する教育」が根強いんですよね。一般社会に生まれるとなかなか障害のある方と関わらないまま大人になっていく方が多いです。

そのため私たちは、デジリハを通して少しでも「障害を持った子には優しくしましょう」ではない関わり方を育めていけたらと思います。

下谷

障害のある方とない方が共生できる社会になったら良いですね。今回はインタビューを受けて頂き、ありがとうございました。

まとめ:デジリハは障害のある子どもの心と身体両方の成長をサポートする

今回は、株式会社「デジリハ」の仲村さんに、デジリハの事業内容と障害のある子どものリハビリの現状についてインタビューを行いました。

株式会社「デジリハ」は障害のある子どもの運動的なリハビリを行うだけでなく、成長することへの喜びの感情をももたらせてくれるツールを展開し、障害のある子どもとない子どもとの交流の場を設けて「分断」をなくそうと取り組んでいる企業であると感じました。

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この記事の編集者

小野日楽と申します。福岡の高校2年生です。社会的企業や活動についての情報を分かりやすくお届けすることを頑張ります!一緒に学んでいきましょう!

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