日々の生活に欠かせない食べ物は、生産から消費まで多くの過程を経て、私たちの食卓に並びます。しかし、この過程において多くの食材が廃棄されているという現実があります。これが「食品ロス」と呼ばれる問題で、世界的にも大きな社会問題となっています。
本記事では、食品ロスの定義や原因、企業の取り組み、そして私たち1人1人が食品ロスに対してできることを紹介していきます。私たち1人1人の意識と行動が、サステナブルな未来のためにどんな役割を果たすか、一緒に考えていきましょう。
食品ロスとは、フードロスとフードウェイストを合わせたもの
食品ロスとは、まだ食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品の総称です。日本では食品ロスとフードロスとは同じように扱われていますが、厳密には「食品ロス = フードロス(food loss) + フードウェイスト(food waste)」です。フードロスとフードウェイストの違いを、以下の画像に纏めました。
フードロスとは、食料を生産する現場や加工・流通の過程で発生する、食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品廃棄物の総称です。フードウェイストとは、小売店や飲食店・家庭などで発生する、食べられるにも関わらず廃棄されてしまう食品廃棄物の総称です。
具体例を挙げると、以下のようなものがフードロス・フードウェイストに当たります。
フードロス(food loss)
- 虫に食われて出荷できなくなった果物
- サイズが規格より小さく出荷できない野菜
- 食肉加工場で切り落とされた余分な肉
- 運送の際に傷がついてしまった魚
フードウェイスト(food waste)
- スーパーでの売れ残り商品
- コンビニで賞味期限間近で廃棄になった商品
- バイキングで食べられなかった食べ物
- 家庭で調理の際に出た野菜くず
また、食品ロスは事業系食品ロスと家庭系食品ロスの2種類に分けることができます。
事業系食品ロスとは、農家や流通・卸・小売・飲食店などの事業上で発生している食品ロスのことです。家庭系食品ロスとは、消費者の家庭の中で発生している食品ロスのことです。
日本の食品ロスの総量は、年間523万トン
日本では、年間523万トンの食品ロスが発生しています。(農林水産省調べ)その中で、279万トンが事業系食品ロス、244万トンが家庭系食品ロスとなっています。(下記グラフを参照)
これは、現在出荷された食料のうち33%の割合が食品廃棄物になっていて、私たち1人あたり1日お茶碗1杯分のご飯を捨てているという計算です。
事業系食品ロスの内訳は、食品製造業・外食産業・食品小売業の順で多く、規格外食品や返品・売れ残り・作りすぎ・食べ残しなどが主な原因となっています。
家庭系食品ロスの内訳は、直接廃棄・食べ残し・過剰除去の順で多くなっています。過剰除去とは、野菜の皮を厚くむきすぎるなど、まだ食べられる部分にも関わらず捨てられる物のことです。
世界の食品ロスの総量は、年間約13億トン
世界全体では、年間約13億トンの食品ロスが発生しています。(国際連合食糧農業機関(FAO)調べ)これは、全世界の食料生産量の1/3に上っています。年13億トンの廃棄される食品は、全世界の飢餓を解決できるほどの量です。
また、発展途上国と先進国での食品ロス問題の内訳にも注目が必要です。FAOによると、発展途上国では主に農産物の生産や輸送段階でのロスが多く、食品不足や貧困の悪化につながる可能性があります。一方で、先進国では小売業や消費者の家庭での食料廃棄が主な要因となっています。例えば、アメリカ合衆国では毎年約2800万トンもの食品が廃棄されており、これは国内の食品生産量の約30%に相当します。
以下のグラフは、食品廃棄物排出量の世界ランキングです。中国とアメリカが食品廃棄物の発生総量が多くなっています。1人あたりの食品廃棄物発生割合は、イギリスやアメリカが多くなっています。
食品ロスの削減が必要な4つの理由
日本や世界ではたくさんの食品ロスが発生していることは分かりました。しかし、なぜ食品ロスは削減しなければならないのでしょうか?ここでは、食品ロスを削減すべき4つの理由を解説していきます。
①:飢餓と栄養不足の軽減
食品ロスを削減し、その一部を飢餓に苦しむ人々に提供することで、世界中の飢餓と栄養不足を解決することができます。世界中には食糧不足で苦しむ人々がいる一方で、私たちは無駄に食品を捨てているという現実があります。食品ロスを削減することは、栄養不足や健康問題の軽減につながり、より公平な社会を築く一環となります。
②:環境への負荷低減
食べ物を作る過程では、農地開拓による自然破壊や運搬時のCO2の排出など、様々な環境負荷を発生させています。このような環境への負荷は地球温暖化や生態系の乱れの影響となり、持続可能な未来を脅かす問題点です。余剰な食べ物の生産を抑えることで、地球環境を保護し、気候変動への対策を推進する一環となります。
③:資源の有効活用
食糧を作る過程では、大量の水・人・土地・エネルギーを消費します。食品ロスを削減することで、世界の水不足の解決や人・土地の有効活用に繋がります。また、食品ロスを減らすことで食料自給率の増加に繋がります。食料自給率の増加は、有事の際の食の安全保障に重要な役割を果たします。
④:経済へのプラス効果
食品ロスを削減することで、過剰仕入れによる損失や廃棄費用の削減に繋がります。これらは、企業の経営にとっても経費を減らす効果があります。
食品ロスが発生する原因は?
食品ロス問題の原因は、事業系食品ロスと家庭系食品ロスで異なります。
事業系食品ロスの原因としては、以下の要因が挙げられています。
- 規格外野菜や規格外食品の廃棄(隠れ食品ロス)
- 製造工程でのロスカット
- 返品
- 運送中の破損
- 3/1ルール(賞味期限が残り2/3になるまでに納品、残り1/3になるまでに販売しなければいけないという、賞味期限切れの販売を防ぐための慣習)
- 売れ残りによる食材廃棄
- 仕込み過ぎによる余剰在庫処分
- 外食産業での食べ残し
家庭系食品ロスの原因としては、以下の要因が挙げられています。
- 調理の際の過剰除去
- 食べ残し
- 賞味期限・消費期限内に食べられなかった
- 購入後、存在を忘れて賞味期限を過ぎてしまった
- 必要以上に買い過ぎてしまった
- 余った食品をどう活用すれば良いか分からなかった
私たちが家庭で食品ロスを削減するためにできる事は?
食品ロスについては様々な原因がありますが、食品ロスを減らすには私たちができることは何があるのでしょうか?ここでは、食品ロス削減のために簡単に自分たちにできることを13個紹介していきます。ぜひ食品ロスを減らすために、日常から個人でできる解決策を始めてみましょう。
買い物の際に、食品ロス削減のためにできる事
①:買い物に行く前に、家にある食材を事前にチェックする
買い物に行く前に、冷蔵庫やキッチンにある食材を確認しておくことで、同じ食材をまた買ってしまうことを防ぐことができます。冷蔵庫の中身が分かるIoT冷蔵庫を導入したり、買い物リストを事前に作っておくことも、同じ食材の購入を防ぐことに役立ちます。
②:不要な食材は買わない
セールだから、今安いから、といった理由でついつい食材を買ってしまいがちですが、これらはゆくゆく賞味期限が切れて廃棄してしまうかもしれません。ローリングストックという、必要になった都度食材を購入する方法を導入することで、常に鮮度の高い食材を食べることができます。
③:棚の前にある食材から手に取る
スーパーやコンビニなどでは、基本的に棚の手前側に賞味期限が近い食材が、棚の奥側に賞味期限が遠い食材が配置されています。多くの顧客が棚の奥側から商品を手に取ってしまうと、賞味期限が近い商品が期限切れで廃棄されやすくなってしまいます。そのため、私たちが率先して棚の手前側の商品から手に取っていくことが、小売店での食品ロス削減に繋がります。
④:規格外野菜や箱崩れなどで安く売られている商品を、なるべく買ってあげる
最近は、賞味期限が近かったり、傷ものの野菜や果物・箱にへこみがある商品などが、安く販売されているケースがあります。これらの商品は隠れ食品ロスとも言われ、私たちが普段目にしない所で捨てられる食品ロスです。これらの隠れ食品ロス商品を、私たちが積極的に購入してあげることで、規格外商品の廃棄削減に影響を与えることができます。
調理の際に、食品ロス削減のためにできる事
①:賞味期限の近い食材から使用する
冷蔵庫を見て、賞味期限が近い食材から率先して使っていくことで、賞味期限切れで廃棄してしまう食材削減に繋がります。今ある食材からどんな料理が作れるか、食材を無駄にしないレシピサイトを使って検索してみると、新しい料理を発見できるかもしれません。
②:過剰除去をしないようにする
野菜の皮をむく際や肉の脂身を切り落とす際など、不要な部分を過剰に除去してしまうことを過剰除去と言います。過剰除去は使える部分を捨ててもったいないだけでなく、食品ロスの中でも大きな割合を占めています。なるべく過剰除去を減らす調理を心がけてみましょう。
③:食べきれる量だけ作る
食べきれないほどの料理は、得てして食品ロスになりやすいです。家庭でしっかりとどれくらい食べるかコミュニケーションを取り、なるべく作りすぎないよう努力しましょう。
④:食べきれない食材は、冷凍保存したり保存食にしておく
作りすぎて余った料理や、使わなかった食材などは、冷凍庫で保存しておきましょう。小分けにして冷凍保存しておくことで、食べたい時に簡単に使えるようになります。また、余った食材を、塩漬けや発酵・フードドライヤーなどで保存食にしてみるのも良いかもしれません。
外食の際に、食品ロス削減のためにできる事
①:食べきれる量だけ注文する
外食に行くと、ついつい美味しい料理をたくさん頼みがちですが、それで多くの料理を残してしまうとすごくもったいないです。実際、飲食店の食品ロスの半分は、私たちが食べ残した料理です。無理に大盛などを頼まず、食べきれる量だけ注文することを心がけましょう。
②:食べきれなかった料理は持ち帰る
お店によっては、食べきれなかった料理をドギーバッグやタッパーなどで持ち帰ることができます。ドギーバッグとは、アメリカや中国などで利用されている、持ち帰り用の容器のことです。もし食べきれなかった場合は、お店の方に持ち帰りができないか聞いてみましょう。
家庭でどうしても食材が余ってしまった時に、食品ロス削減のためにできる事
①:周りの家庭におすそ分けをしてみる
近所に仲の良い家庭がいる場合は、それらの家庭におすそ分けをしてみるのはいかがでしょうか?家庭同士でおすそ分けをし合うことで、様々な食品を楽しむことができます。
②:フードバンク・フードドライブを利用する
フードバンク・フードドライブを利用することは、食品ロス削減の解決策の1つになります。フードバンクとは、賞味期限が残っている廃棄前の食品を福祉施設や子ども食堂などに無償で寄付する団体のことです。フードバンクに寄付をすることで、貧困家庭や栄養不足の子ども達に、余った食材を渡すことができます。直接フードバンクに行くのが難しい方は、自治体が主催するフードドライブに食品を寄付することで、自治体が適切な団体に食品を振り分けてくれます。
③:家庭用コンポストを導入してみる
コンポストとは、捨てた生ゴミが堆肥に生まれ変わるゴミ箱のことです。食べ残したご飯や野菜の皮・卵の殻などの廃棄食品をコンポストに入れることで、微生物が分解し、栄養豊富な肥料へと生まれ変わります。コンポストで作った肥料を、家庭菜園に再利用することで、リサイクルにも繋がります。食品ロスだけでなく廃棄物全体を減らすには、コンポストは良い解決策となります。
食品ロス削減に貢献できる通販サイトを5つ紹介!
ここでは、食品ロスの可能性が高い食べ物を格安で販売している通販サイトを5つ紹介していきます。こうしたサイトで食べ物を購入する事で、自分たちにできることとして食品ロス削減に貢献することができます。食品ロス削減に取り組んでいる企業は、これらの通販サイト以外にもたくさんありますので、ぜひ気になった方はこちらも調べてみてください。
ロスゼロ
ロスゼロは、『世界にあふれる「もったいない」に光をあて、つくる人、たべる人、全ての人が笑顔になれる』ことをコンセプトにした通販サイトです。ロスゼロで購入できる食品ロス予備軍は、以下のような商品があります。
ロスゼロ定期便
2ヶ月に1度、5000円で9000円~10000円相当の詰め合わせセットが配送されてくるサブスクリプションサービスです。中身は福袋のようにランダムで、直近で食品ロスになりそうな食べ物の詰め合わせが送られてきます。
1回の利用で約4~5kgの食品ロス削減、18.13kgのCO2削減に繋がります。
アップサイクル商品
普段廃棄されている食材をアップサイクルし、新たな食品に生まれ変わらせています。
規格外のいちごを使用したホワイトチョコレートや、使われなかったナッツやカカオ豆を使用したミルクチョコレートなどのスイーツが販売されています。
食品ロス予備軍の単品販売
ロスゼロでは、単品からでも食品ロス予備軍を購入することが可能です。
高級カステラの切れ端を纏めた10袋セットや、1/3ルールにより店頭販売が難しくなった鯛めし、数粒だけ変色してしまった北海道産とうもろこしなどが販売されています。
Kuradashi
Kuradashiは、『楽しいお買い物で、みんなトクするソーシャルグッドマーケット』を理念にした通販サイトです。
Kuradashiでは、賞味期限間近のクッキーや、商品リニューアルのため販売できなくなったサプリメント、1/3ルールで販売できなくなったGODIVAのココア、規格外の訳あり白桃などが販売されています。お酒やワイン、醤油、パスタなど幅広い食品が販売されているのがKuradashiの特徴です。
また、Kuradashiで商品を購入すると、その一部を任意の社会貢献活動に寄付することができます。食品ロス削減に貢献しながら、自分たちで応援したい社会貢献団体に寄付をすることができ、手軽に社会貢献へ参画することが可能です。
rebake
rebakeは、パンの力で食の未来を変えていく『パンのお取り寄せ・通販マーケット』です。主に、廃棄になりそうなロスパンを取り扱っています。
rebakeではまず、購入したいパン屋を選び注文します。ドイツパン専門店や食パン専門店、グルテンフリー専門のパン屋さん、沖縄のパン屋さんなど、全国900以上のパン屋がショップを開いています。その後、注文したお店でロスパンが発生したタイミングで、ロスパンの詰め合わせセットが配送されます。
rebakeでも、売上の一部が食品ロスや環境問題に取り組んでいる団体に寄付されています。
SUKUERU
SUKUERUは、フードロス食品や訳あり食品を福袋形式で販売する通販サイトです。福袋を通して、自分ではなかなか購入しない食品と出会いながら、自然とフードロス削減に貢献できるサービスを提供しています。
SUKUERUではまず、以下から福袋のサイズを選択します。
- Mサイズ(約20個の商品が入る):5500円相当が3980円
- Lサイズ(約25個の商品が入る):7200円相当が4980円
- XLサイズ(約30個の商品が入る):9000円相当が5980円
その後、自分で詰める商品を選ぶか、おまかせでおすすめ商品をまとめてもらうかを選択します。SUKUERUの商品には、賞味期限が近く在庫処分になってしまうレトルト食品やおつまみ、お菓子、缶詰などの訳あり食品があります。福袋が完成すると発送され、数日後にご自宅に届く仕組みです。また、フードロスについての知識も提供しています。
ロスオフ
ロスオフは、全国の在庫ロスを抱える「生産者・卸業者・販売者」と「購入者」を直接つなぎ、格安で商品が購入できる通販サイトです。
ロスオフは食品ロスだけでなく在庫ロス全体にフォーカスしているサイトのため、生活雑貨やおもちゃ、洋服、化粧品、お花なども販売しています。もちろん、お菓子や肉・野菜・魚、スイーツなどの種類の食品も取り扱っています。
ロスオフは販売者の顔が見える点が特徴的で、出品者の住所やお店の紹介、生産者の顔、レビューなどを見ることができます。これにより、在庫ロスの安い商品・廃棄前の安い食品でも、顧客は安心して商品を購入することができます。
政府や学校が行っている、食品ロス削減のための取り組み
食品ロス削減のために、国や政府も対策を行っています。例えば、賞味期限が近い災害用備蓄食品をフードバンクに提供したり、小売業者に1/3ルールの見直しを提案したり、農林水産省や消費者庁が食品ロス削減推進法・食品リサイクル法を制定したりしています。食品ロス削減推進法では、食品ロス削減の日が制定され、10月が「食品ロス削減月間」、10月30日が「食品ロス削減の日」とされました。
また、クックパッドに食材廃棄をなくす「野菜を丸ごと使ったレシピ」「余った料理の再利用アレンジレシピ」などを掲載したり、食糧ロス・フードロスについて1日で勉強できるサイトを公開しています。
学校では、給食での食品ロス削減に現在取り組んでいます。給食は時間が短いわりに量が多く、子どもの好き嫌いもあるため、食糧ロスが多く出てしまうという問題点があります。(子どもが嫌いで食品ロスになりやすい食材上位3つは、ゴーヤ・なす・レバーです)そこで、学校では以下のような取り組みが行われています。
- 過剰除去をなるべく減らす
- 給食の時間をなるべく長く取ってあげる
- 子どもたちが苦手な食べ物は、みじん切りにしたりハート型にしたりすることで、食べ残しを減らす
- 食品ロスについての啓発授業を行い、食品ロス削減のために子供にできることを知ってもらう
- 廃棄食品を飼料や肥料にしてリサイクルする
まとめ:食品ロス削減には、まずは私たち1人1人の取り組みが大事
今回は、食品ロスの定義や意味、原因、実際に行われている取り組みについて解説していきました。今回紹介した他にも、食品ロス対策を行っているサステナブルな企業や取り組みは多数存在します。私たちが率先して食料廃棄を生み出さないような取り組みを行いながら、食品ロス削減に取り組む取り組みを応援していくことが、世界の食品ロス削減に繋がっていくと思います。個人で削減できる量は少ないですが、大人・子供にできることを合わせて、食品ロスを減らすために努力をしていきましょう!
ソーシャルエッグでは、食品ロス削減やソーシャルグッドなことに取り組む個人・企業・法人などを多数紹介しています。そちらもぜひ見て応援して頂ければと思います。