ESGとは?ビジネスでの意味とESGに積極的に取り組む企業を紹介!

近年、ビジネスの社会で「ESG」という言葉をよく耳にするかと思います。「ESG活動」「ESG投資」「ESG環境」「ESG経営」など、様々な箇所でESGという名の付く言葉が使われています。今回は、ESGに関心を持っている方向けに、ESGの意味を簡単に説明しつつ、ESGに積極的に取り組んでいる日本企業を5社紹介していきます。

こんな人におススメ!

  • ESGの意味を知りたいビジネスマン
  • ESGを行っている企業への、投資や協業を考えている方
  • 自社にESG経営を導入しようと考えている方
目次

ESGとは?Environment, Social, Governanceの略称

ESGとは、企業の持続的な成長に重要な3つの要素「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」を纏めた用語です。各要素についてわかりやすく説明すると、以下のようになります。

環境(Environment)

環境への影響や持続可能性に関する要素です。企業の環境への取り組みやリソースの効率的な利用、産業廃棄物の管理などが含まれます。気候変動への対応や再生可能エネルギーの利用などが含まれます。

社会(Social)

社会的な影響や関与に関する要素です。従業員やコミュニティへの配慮、人権の尊重、ダイバーシティとインクルージョン、労働条件の向上などが含まれます。

ガバナンス(Governance)

企業の運営体制や統治に関する要素です。透明性、責任の明確化、株主の権利保護、経営陣の資質などが重要視されます。

ESGが注目されている理由

ESGが注目を集め始めた理由は、2006年に国連が「責任投資原則(PRI)」を発表したことが発端です。PRI(Principles for Responsible Investment)とは、投資家に持続的な視点での投資先決定を促すもので、その際にESGに則った社会的企業を選択することを推奨しました。

また、日本では2015年に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名を行った事で、ESGの知名度が一気に高まりました。

B Corp認証とは?ESGに取り組む公益性の高い企業のみが選定される、国際認証制度

その企業がESGに積極的に取り組んでいるかが分かる1つの指標として、B Corp認証があります。B Corp認証はESGに積極的に取り組む企業を認証する制度で、認められるには高い基準をクリアする必要があります。

2023年7月時点で、日本でB Corp認証を受けている企業はわずか30社のみです。

このロゴが付いている商品は、B Corp認証を受けている証

ESGとSDGs・CSR・SRIとの違い

ESGとSDGsの違い

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、国連が2015年に採択した、持続可能な社会環境を作るための「17の目標・169のターゲット・247の指標」を纏めた目標のことです。

ESGとSDGsは、いずれも持続可能性に関連する概念ですが、異なる側面に焦点を当てています。ESGは企業や投資家の持続可能性へのアプローチを指し、環境、社会、ガバナンスの要素に焦点を当てています。一方、SDGsは広範な社会課題に取り組むための国際的な目標を示し、貧困削減や教育普及などの社会全体の目標にも焦点を当てています。

ESGとCSRの違い

CSR(Corporate Social Responsibility・企業の社会的責任)とは、企業が利益追求だけでなく、社会や環境への影響を考慮し、それに貢献する活動を行う姿勢や取り組みを指します。CSR活動としては、環境保護、慈善活動、地域社会の支援、従業員の福祉などが行われています。

ESGとCSRは、いずれも企業が社会的責任を果たすためのアプローチを示す概念ですが、異なる側面に焦点を当てています。ESGは持続可能性を評価するための指標であり、環境、社会、ガバナンスの要素に焦点を当てています。一方、CSRは企業が社会的責任を果たすための広範な取り組みを指し、利益追求だけでなく社会的価値の創造を目指します。ESGは評価の側面が強く、CSRは取り組みの側面が強いと言えます。

ESGとSRIとの違い

SRI(Socially Responsible Investment)とは、投資家が社会的・環境的な観点を重視して投資を行う手法のことです。SRIは、投資対象企業の持続可能性や社会環境への影響を考慮し、社会的価値の創造や悪影響の軽減に焦点を当てています。

ESGとSRIは、いずれも持続可能性と社会的責任に関連する概念ですが、投資の観点から異なる側面に焦点を当てています。ESGは企業の持続可能性を評価するための指標であり、環境、社会、統治の要素に焦点を当てています。一方、SRIは投資家が社会的・環境的な要因を考慮して投資を行う手法であり、企業の社会的責任や持続可能性に関連する取り組みを重視します。ESGは評価の側面が強く、SRIは投資アプローチの側面が強いと言えます。

ESG経営とは?企業がESGに基づいた経営戦略を取る経営手法のこと

ESG経営とは、企業がESGを理念やビジョンに据えて、ESGファーストでビジネスを行う手法のことです。このアプローチでは、環境への影響、社会的な関与、ガバナンスの向上に焦点を当て、長期的な価値創造とリスク管理を推進します。

環境面では、温室効果ガスの排出削減や森林破壊の削減、廃棄プラスチックの減少などを通じて地球への負荷を軽減します。社会的側面では、従業員の幸福感や健康、人権尊重、ダイバーシティとインクルージョンの推進に取り組み、地域社会との関係を強化します。ガバナンス面では、透明性や株主の権利保護、汚職の撲滅などを行い、企業の信頼性を高めます。

ESG経営を行う事で、企業自身が長く持続的に成長できます。また、投資家の関心も高まっており、ESG経営とは投資判断の際の重要な意味を持っています。

国内企業の43.5%は、ESGに対して何らかの取り組みを行っています。また、国内企業の11%は、全社的にESG経営を行っていて、ESG経営に基づいたビジネスは今後も拡大を続けていくと推測されています。(IDC調べ

ESG投資とは?売上や利益だけでなく、ESGへの取り組みも重視する投資手法のこと

ESG投資とは、投資する際に企業のESG情報を重視して投資先を選ぶ手法のことです。

従来の投資は、単に売上額や利益率といった金銭面の指標を重視していました。しかしそれでは、企業が環境汚染を行っていたり、人種差別を行っていたりしても見抜くことができず、損を被るリスクがあります。

そこで、企業の環境への取り組みや社会・ガバナンスへの取り組みも重要視することで、金銭面の指標だけでは見えないリスクを排除することができます。このような考えから、ESG投資とは投資家の中で注目を集めています。

ESG投資の7つの種類

世界のESG投資の統計を取っている世界持続可能投資連合(GSIA:Global Sustainable Investment Alliance)は、ESG投資をわかりやすく7つの種類に分類しています。

①:ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニング(Negative/exclusionary screening)とは、銃や化石燃料、原子力発電、たばこ、ポルノ、ギャンブル、アルコール、動物実験などの企業を投資対象から排除する投資手法です。

この手法は、投資家がESGの観点から投資先を選定する際に使用される、最も一般的かつ古典的な方法です。

②:ポジティブ・スクリーニング

ポジティブ・スクリーニング(Positive/best-in-class screening)とは、ESGのスコアが高い銘柄のみに投資をする投資手法です。環境・社会・ガバナンスの3要素から対象企業のESG評価スコアが選定されていて、このスコアの高い企業に対して投資を行う方法です。

③:国際規範スクリーニング

国際規範スクリーニング(Norms-based screening)とは、最低限の国際規範にも達していない企業に対しては投資を行わない、という投資手法です。国際規範としては、

  • 経済協力開発機構(OECD)が定める多国籍企業行動指針(外務省HP
  • 国際労働機関(ILO)が定める児童労働や労働者の待遇、男女平等、ハラスメントなどの条約(ILOのHP
  • 国連が定める環境ルール

などがあります。

④:サステナビリティ・テーマ投資

サステナビリティ・テーマ投資(Sustainability-themed investing)とは、持続可能性を事業の主軸においた銘柄に投資を行う投資手法です。再生可能エネルギーや持続可能な灌漑農業、浄水設備の開発、エコファンドなどがサステナビリティ・テーマ投資に当たります。

世界では少数派の投資手法ですが、日本では最も古くから行われていて今なお人気の高い投資手法です。

⑤:ESGインテグレーション

ESGインテグレーション(ESG integration)とは、企業のESGへの取り組みだけでなく、売上や利益率などの財務情報だけでもなく、両者を総合的に考慮して投資先を選ぶ投資手法です。特定の企業を排除するのではなく、総合的な評価をする点がポイントです。しかし、総合的な評価の決め方は各投資家に任されているため、必ずしもESG環境に100%配慮した企業のみが選ばれるとは限りません。

現在はネガティブ・スクリーニングの次に大きな運用額となっています。

⑥:インパクト・コミュニティ投資

インパクト・コミュニティ投資(Impact/community investing)とは、環境や社会を良くする銘柄に投資を行う投資手法です。

投資の際に「ソーシャルインパクト」と呼ばれる、定量的に測る社会課題を解決した総量をチェックします。例えば、フードロス解決企業の場合は「何トンのフードロスを解決したか」、子どもの貧困解決企業の場合は「何人の貧困を解決したか」といった数値が、ソーシャルインパクトに当たります。

⑦:エンゲージメント・議決権行使

エンゲージメント・議決権行使(Corporate engagement and shareholder action)とは、投資を行った企業に対して、ESGに基づいた経営を行うよう株主総会で促す手法です。投資を行った企業に株主としてESGの取り組みを積極的に働きかけ(エンゲージメント)、場合によっては議決権を行使し、持続的に成長する企業になるよう促します。他の6要素とは少し異なったユニークな手法です。

ESG投資の市場規模は約129兆円

2021年末時点で、全世界のESG投資額は約129兆円とされています。(三菱総合研究所調べ)地域別ではヨーロッパがトップで約58兆円、続くアジア太平洋が約28兆円、北米が約21兆円程度となっています。

日本は経済規模の割にESG投資が進んでおらず、中国の約1/3・韓国と同程度のESG投資規模となっています。

ESGに積極的に取り組んでいる日本企業を5社紹介!

ここでは、ESGに積極的に取り組んでいる日本企業を紹介していきます。今回は、ESGに積極的に取り組む企業のみに送られる世界的な認証「B Corp認証」を取得している日本企業から、5社をピックアップし紹介していきます。

今回は、あえて事業内容が社会課題と直接紐づいていない企業をビックアップしたので、「うちの会社は社会課題解決を目指しているわけではないし、ESGを取り入れるのは難しいかなぁ」と思っている方にこそ、ぜひ読んで頂きたいです。

株式会社Colere

Colereは、あらゆる人々が信頼で結ばれた組織を創る支援を行っている企業です。具体例としては、組織コンサルティングや管理職へのマネジメント研修、組織変革伴走プログラムなどを提供しています。

Colereの共同創業者の2人は、地元オーストラリアでの山火事や洪水・グレートバリアリーフの保全などの問題を目の当たりにし、「環境問題や気候変動に取り組む企業になりたい」と思い、ESGへの取り組みを開始。その後、以下のESG活動を実施しました。

信頼で結ばれた組織づくり

会社の価値観の明文化や共有、多様性に富んだチームメンバーの採用、メンバー同士のフィードバックシステムなどを導入し、信頼で結ばれた組織づくりを目指しています。

「3つのP」へのコミットメント

People, Profit, Planetの3つのPにコミットし、持続可能性が高く、環境や社会に配慮した企業運営を行っています。

ダイバーシティ

創業期の社員が少ない時から、多様な国籍のメンバーと仕事を行っています。価値観が違う人同士、お互いが気持ちよく仕事ができるようなハンドブックも作成しました。

1%バトン

毎年売上の1%を、地球を良くする団体に寄付しています。

組織サーベイサービスの開発

誰もが信頼で結ばれた組織を築けるよう、わずか15分で組織の強みや改善点などが分かる組織診断サービスを開発しました。

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株式会社Innovation Design

Innovation Designは、社会課題解決を目指すおみやげショップ「haishop」、サステナブルなカフェとレストラン、社会課題解決を目指すウェディング「haiwedding」などを運営している企業です。

Innovation Designは元々、ホテルの事業再生や地域のコンサルティングなどを行っている会社でした。しかし、2020年に会社の理念を「人と地球の未来を描く」に刷新し、ESG経営に舵を切り替えました。そこから、社員一丸となってサステナビリティを勉強し、haishopやhaiweddingなど社会課題解決を目的とした事業を開始しました。また、既存のカフェやレストランも、すべてサステナブルな飲食店に切り替え、ヴィーガン対応の無農薬栽培メニューの開発や、フェアトレードコーヒーの提供などを始め、サステナブル企業に生まれ変わりました。

Innovation Design.,Co,Ltd.|イノ...
Innovation Design.,Co,Ltd.|イノベーションデザイン 「ひとと地球の未来を描く」をヴィジョンに掲げ、事業を通して社会課題の解決を目指す企業です。日本サステイナブル・レストラン協会認定の飲食店格付け「FOOD MADE GOOD」...

日産通信株式会社

日産通信は、光ケーブルの敷設や電気通信設備の保守、ネット回線工事などの電気通信工事を手がける企業です。また、日本でB Corp認証を取得している企業の中では数少ない、中小企業でもあります。

日産通信は、代表の福田氏が元々ボランティアに関心を持っていました。その後東日本大震災の影響で、ボランティアの方々に何か支援できる力が欲しいと実感し、ハーバード社会起業大会のスタディーツアーに参加しました。そこで、アフリカの診療所で診断書をExcelにすべて移した社会起業家が表彰を受けているのを見て、自分でもソーシャルビジネスができるのだと思いました。

その後、ニューヨーク市が運営するボランティア活動に参加し、農業と耕作放棄地問題に目を付け、農業大学校で農業を学び、耕作放棄地でさつまいもとお米の栽培を始めました。そこから日産通信ではCSR活動として、農業を通した地域活性化に取り組み続けています。

日産通信株式会社
日産通信株式会社 日産通信株式会社ホームページ

株式会社パブリックグッド

パブリックグッドは、クライアントの課題を解決するマーケティング企業です。広報・PR部門設立支援や事業課題コンサルティング、SNS運用コンサルティング、イベント運営や商品企画、ユニークなWEBコンテンツ制作など、幅広いクライアントの要望に応えるサービスを提供しています。

マーケティング企業では、短期的な成果の達成を重視するあまり、クライアント企業の持続的な成長をないがしろにするようなPRを行っている事例も見受けられています。これでは、クライアント企業の持続可能性に繋がらないため、パブリックグッドではサステナブルなマーケティング施策に注力しています。

また、パブリックグッドでは、全社員が今できること・社会や自社にとっての重要度を纏めたマテリアリティ・マトリックスを作成し、これら19のマテリアリティの解決に取り組んでいます。さらに、以下のESG活動を実施しています。

クライアントの皆さま・社会に誠実であるために

  • 顧客満足度調査の実施と結果を踏まえた改善検討
  • NPO法人Shape the Dreamへの寄付

働きやすい、働き続けられる職場を目指して

  • 育児休暇取得率・復帰率100%
  • 従業員の男女比率:男性36%、女性64%
  • ダイバーシティ研修実施
  • 無料で本読み放題
  • リモートワーク、出社どちらでも選択できる

環境にやさしい職場作り

  • 環境負荷の少ないオフィス用品使用
  • マイ弁当、カトラリー、ハンカチ持参推奨
  • フリースペース導入で使っていないスペースの節電を徹底
株式会社パブリックグッド | PUBLI...
株式会社パブリックグッド | PUBLIC GOOD Inc. 株式会社パブリックグッドは、マーケティングコミュニケーション戦略立案、PR戦略立案・実施し、コミュニケーション活動を支援するPR会社です

ダノンジャパン株式会社

ダノンジャパンは、ダノンヨーグルトやダノンビオなどの乳製品を販売している国際ブランドの日本支社です。

ダノンは2020年に「使命を果たす会社」として、ESGに即した持続可能な価値創造を行うサステナブル企業に変わりました。その中の取り組みの1つとして、2025年までに世界中の子会社がB Corp認証を取得することを目指し、日本では2020年にB Corp認証を取得しました。ダノンジャパンでは、ESGに即した活動として、以下の5つの取り組みを実施しています。

ガバナンス

ダノンのビジョンを全社員に浸透させるため研修を行いました。また、従業員に株を付与し経営陣に意見を言う機会を作ることで、従業員と経営陣が一丸となってダノンを作るという文化を醸成しています。

また、消費者に対する3つの約束として以下の3つを掲げています

  • 「素材へこだわります」すべての製品において、厳選された原材料にとことんこだわる形で製品をお届けします
  • 「原材料に関する情報発信を強化します」製品に使用している原材料の原産国をお客様相談室でお答えします
  • 「引き続き、日本の皆さまの栄養ニーズにお応えできる製品を開発します」栄養補助に必要なカルシウムやビタミンDなどを強化します

従業員

Work from Anywhere制度を導入し、様々な特別休暇を提供し柔軟なワークライフバランスを提供しています。

また、ダノン製品をいつでも無料で食べられる福利厚生や、社員の健康のためのジムやスポーツクラブへの助成金を提供しています。

さらに、2000コース以上のダノンアカデミーを用意し、各自が学びたいスキルや知識を学習することができます。

コミュニティ

ダノンジャパンの経営陣は50%が女性で、管理職内での男女間賃金格差はわずか2%となっています。また、ダノンジャパンでは19カ国の従業員が働いています。

地域への貢献として、3万人の児童と保護者に食育活動を実施したり、小学生の国際サッカー大会「ダノンネーションズカップ」を開催しています。

環境

2025年までに100%のパッケージを再利用可能・リサイクル可能・堆肥化可能な商品にすると約束しています。

また、2050年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しています。

顧客・消費者

2011年に日本の乳業界で初めて、食の安全国際規格であるFSSC22000を取得しました。また、ダノン独自の品質向上プログラム「iCare」に2016年から取り組んでいます。

DANONE JAPAN
B Corp認証 | 社会的インパクト | ダノンジャパン | ダノンのヨーグルトサイト | DANONE JAPAN 世界中のより多くの人々に、食を通じて健康をお届けする。ダノンジャパン株式会社のB Corp認証に関するページです。

ESG経営を導入する際に行う、4つのステップ

ESGへの関心の高まりを受け、2020年に東京証券取引所が「ESG情報開示実践ハンドブック」というESG経営のハンドブックを作成しました。このハンドブックでは、ESG経営を行うにあたり4つのステップを示しています。

画像参照:https://www.jpx.co.jp/corporate/sustainability/esg-investment/handbook/index.html

ステップ1:ESG課題とESG投資の現状を理解する

まずそもそもESGとは何なのかを理解し、なぜESG投資が世界で拡大しているのかをきちんと把握する必要があります。ESGでは、前述した7つの種類やSRI・サステナビリティなどの専門用語が多く使われるため、まずはこれらの知識を身に着けることが必要です。

ステップ2:自社の経営戦略と関わるESG課題を特定する

ESGに含まれる課題は多種多様に存在します。多くの場合、自社の企業価値に関係がありそうなESG課題をリストアップし、自社の価値観・ビジネスモデル・戦略やステークホルダーへの影響などをふまえて重要度を決定し、どのESG課題に取り組むかを選定します。これをマテリアリティ分析と呼び、日本取引所デロイトトーマツではこれらのように行われています。

どのマテリアリティに取り組むか決めた後、自社の戦略にESGを組み込んでいきます。

ステップ3:適切な目標を設定し、監督を司る社内体制を構築する

目標値の設定方法としては、以下の2つの方法が紹介されています。

  • 実現可能性の観点から、過去の実績を積み上げて将来の予測値を算出し、目標値とする
  • 環境や社会的課題に関する国内外の目標値等を参考にして、自社の目標値を定める

これらの目標設定が完了した後、自社の経営がESGに則っているかを監督するガバナンス体制を構築していきます。ESG課題について取締役会や役員会、社内全体でしっかりと浸透させ、他の経営課題と同じくらいESGへの取り組みが大事であることを認知させる必要があります。

ステップ4:ESG情報を投資家に有用な形で開示する

自社がESG経営を行っていても、投資家にそれを認知してもらえないと、ESG投資には繋がりません。そこで、企業はどの媒体でどう自社のESGに対する取り組みを伝えていくかを考慮する必要があります。投資家は第三者機関であるESG評価機関のスコアを重視するため、これらの機関にスコアリング調査を依頼するのも有効な手段です。

また、ESG投資は海外からの投資家も注目するため、英語での情報開示も大切です。

ESG経営を導入すべきメリット・ESG経営の課題点

ESG経営を取り入れることは、企業や従業員にとっても多くのメリットがあります。基本的にESG経営を導入することはメリットが多いですが、ESG経営に取り組む難しさもあります。ここでは、ESG経営のメリット・デメリットを解説していきます。

ESG経営を導入すべき4つのメリット

①:ガバナンス強化による経営リスク軽減

ESG経営を導入した場合、必然的にガバナンス強化に取り組むことになります。ガバナンス強化は、自社の不祥事を未然に防ぎ、法令順守徹底の意識を浸透させます。その結果、大きな問題が起きるリスクを軽減することができます。

②:ESG投資対象として、投資家からの注目度が上がる

ESG経営に積極的に取り組んでいると見られると、ESG投資家からの注目を集めることができます。特に海外のESG投資家やGPIFは、ESG経営を行っている企業に優先して投資を行うため、多額の資金調達に繋がる可能性があります。

③:企業イメージが向上する

ESG経営を行っている企業は、社会課題に取り組んでいる会社として世間からのイメージアップに繋がります。こうした企業には、自社の商品を積極的に購入してくれたり宣伝してくれるファンが付きやすく、企業価値向上に繋がります。

また、ミレニアム世代はESGへの関心も強く、すでに就職先としてESG経営の企業をあえて選ぶ人も少なくありません。ESG経営に積極的に取り組むことで、優秀な人材に働きたいと選んでもらえる企業になることができます。

④:社員のモチベーションアップに繋がる

自分たちの仕事が社会課題解決に繋がっていると分かると、社員の働くモチベーションもアップします。実際、会社の理念をESGに基づいた理念に変えた企業は、社員の仕事への熱量が上がったと答えています。

ESG経営の3つの課題点

①:短期的な結果が出にくい

ESG経営の効果が見えるまでは、早くて3年~5年の時間がかかります。すぐに結果が出るわけではないため、ESG投資先としてのスコアが出るまでにも時間がかかります。

②:指標が乱立している

ESGに対する指標は統一した指標はなく、各査定機関がそれぞれの調査手法でスコアを出しています。ESGスコアを出している機関には、以下のようなものがあります。

  • Dow Jones Sustainability World Index
  • FTSE Blossom Japan Index
  • MSCI日本株女性活躍指数
  • MSCI KLD 400ソーシャルインデックス

このように、各機関それぞれで指標を出しているため、共通点や違いを見つけにいくいという課題があります。

③:資金難の企業は取り入れにくい

ESG経営に必要な取り組み(環境対策での太陽光発電の導入、社会貢献のためのボランティア活動など)には、ある程度の導入資金が必要となります。そのため、資金難の企業や中小企業がESG経営を取り入れにくいという課題があります。

まとめ:自社にESGを取り入れることで、持続的な成長に繋がる

ESGとは、環境・社会・ガバナンスの3要素に注力することで、企業の持続的成長を促す用語です。ESG経営を行う事で、リスクを未然に防ぐことができ、社会的企業として企業価値の上昇にも繋がります。

また、ESGは自社の事業内容がソーシャルビジネスでない企業でも簡単に取り入れることが可能です。「どうやって自社にESGを取り入れよう?」と考えている方は、ぜひ上記で解説したB Corp認証を取得した日本企業の具体例を参考にして頂ければと思います。

ソーシャルエッグでは、会課題解決に尽力する人や企業・法人などを紹介しています。ソーシャルグッドな事業に関心のある方は、ぜひこちらも読んでみて下さい。

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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