ソーシャルM&Aで社会起業家の夢を促進する!布田尚大さんインタビュー

今回は、ソーシャルビジネス・スモールビジネスに特化したM&Aサービス「GOZEN」を行う、株式会社drapology CEOの布田尚大さんにインタビューを行いました。

  • 今現在、ソーシャルビジネスの事業を運営している方
  • 新しいチャレンジをするために、今の事業を誰かに渡したい方
  • ソーシャルビジネスの事業を買いたいと考えている方

はぜひ読んでいただけたらと思います!

目次

プロフィール

【名前】
布田 尚大

【年齢】
39歳(2023年6月現在)

【経歴】
株式会社リードエグジビションジャパン(現RX Japan株式会社)
INHEELS COO
株式会社ウツワ COO
株式会社feast 取締役社長 株式会社drapology CEO

【携わっている主な事業内容】
GOZEN:ソーシャルビジネス・スモールビジネスに特化したM&Aサービス

自身のソーシャルビジネスをクローズした経験から、事業承継のためのM&A事業を始めた

下谷

本日はよろしくお願い致します。

ではまず、布田さんの経歴を教えて頂けますでしょうか?

布田

はい。僕は大学・大学院では社会学を専攻していて、学生時代はビジネスだったりM&Aに特段関心があったという事はなかったですね。

ただ、M&Aを専門とするコンサルティング会社で長くインターンをしていて、就職先もそこにしようかなと考えていました。

布田

しかし、2008年のリーマンショックの影響で、新卒募集人数が極端に少なくなり、不採用になってしまいました。

その際に、事業立案やコンサルのような戦略の提案ではなく、直接的に売上を上げるサポートをしたいと考え、「株式会社リードエグジビションジャパン(現RX Japan株式会社)」という、企業向け展示会やEXPOを行っている会社に就職しました。ここでは、半導体・電気機器製造の展示会の企画や出展者の集客などを手がけ、入社3年後にはウェアラブルデバイスの展示会を自ら立案し、運営を行っていました。

布田

この仕事はとても楽しかったのですが、残業や徹夜などハードに働く毎日でした。こんな生活をしている中で、自分自身どんな生き方をしたいのかと改めて考えるようになり、ソーシャルグッドなことをビジネスとして行う「ソーシャルビジネス」に興味を持ち始めました。

そして、元々アパレルやファッションに興味があったことから、「INHEELS」というエシカルファッション会社にて、プロボノとして働き始めました。3年間は展示会の会社とINHEELSを兼業していたのですが、この仕事がとても気にいったため、2016年に転職してINHEELSにCOOとして関わるようになりました。

その後、株式会社drapologyを起業し、GOZENを始めました。

INHEELSのブランド写真
下谷

なるほど。布田さんがM&Aという事業形態で起業をされたのは、なぜでしょうか?

布田

僕が以前関わっていたINHEELSというブランドは、2012年に創業して2019年にクローズしました。

事業の存続について話し合った際、INHEELSを継げる方がいないかと探したのですが、当時の僕にはM&Aの知識もなく、最終的に事業をクローズすることになってしまいました。お客様からは「残して欲しい」という声がありながらも、事業を続けることができなかったという経験をしたことで、今の事業から次に進みたい方のM&A支援をしていきたいと思ったんです。

その後、feastという事業を受け継いで経営し、実際にM&Aをして事業売却を達成したことで、本格的に今の事業形態になりました。

ソーシャルM&Aサービス「GOZEN」とは?

GOZENのサービスについて

下谷

ありがとうございます。では、GOZENのサービス内容についてお伺いさせて頂けますでしょうか?

布田

はい、GOZENはソーシャルビジネス・スモールビジネスに特化したM&Aを仲介しているサービスです。

社会起業家の方が事業を進めていく中で、「事業を成長させるため相性の良い会社と合併したい」「少し休憩したい」「他の社会課題にフォーカスするために、今の事業は手放したい」などの理由から、経営から距離を置く、大きな企業でさらに大規模な社会課題解決を行いたいと思われることがしばしば発生しています。

GOZENでは、こういった経営を手放したい、または大きな企業と一緒にさらに事業を伸ばしたいと思っている方に、最適な買い手となる企業さんを探してきて、マッチングするサービスを手がけています。

美意識ある事業を拡張するM&Aプロ...
美意識ある事業を拡張するM&Aプロジェクト ― GOZEN │ drapology Inc. GOZENとは「美しい経済のナガレを生み出す」をコンセプトとしたM&Aプロジェクト。クリエイター発の美意識あふれるスモールビジネスや社会課題の解決を目指すソーシャルビジ...
布田

ソーシャルビジネスの文脈では、事業を辞めることは社会問題の解決から遠ざかることを意味します。しかし、ソーシャルビジネスは事業を軌道に乗せることが難しい分野でもあるため、事業フェーズに応じた最適な組織体制は異なります。

そんな方々の想いがもっと成長できるよう、同じ想いを持った方へのM&Aは、社会問題解決の持続性に繋がると僕らは考えています。

これまでのディールについて

下谷

これまでGOZENで取り扱ってきたディールについて教えて頂けますか?

布田

これまでGOZENで仲介させて頂いた事業は、ボディポジティブなランジェリーブランド「feast」と、乾燥京野菜ブランド「OYAOYA」ですね。

布田

「feast」は、ハヤカワ五味さんが多摩美術大学在学中に立ち上げた、シンデレラバストの方向けのランジェリーブランドです。

彼女はfeastで事業を行っていく中で、自分自身の想いが明確化されてきて、次第に女性の生理問題に対するビジネスを立ち上げたいと思うようになりました。しかし、現在運営しているfeastはどうしようかという話になり、私自身がCOOとして実質的に3年間ほど経営し、経営状態を改善させた上で株式会社ブルマーレという下着の生産をメインで行う会社さんを仲介したことで、事業の売却が成立しました。

ボディポジティブなランジェリーブランド:feast
feast lingerie
feast公式サイト【AAAカップ|アンダー65|シンデレラバスト向け、小胸ブラ専門通販】 【初回クーポンあり|LINEクーポンあり】AAAカップ・Aカップ・アンダー65など、小胸さん、華奢な方向けの可愛いブラがたくさん揃うfeast(フィースト)公式サイト。こだわり...
布田

「OYAOYA」は、株式会社Agritureで小島さんが創業した、乾燥京野菜のブランドです。

京都の野菜を付加価値を付けて販売することで、農家さんの支援を行っています。小島さんは、京野菜を海外に展開したいと考えていたため、欧米とアジアで事業を展開しながら食品ロス削減にも取り組んでいる、世界的刃物ブランドの「貝印」さんを仲介しました。両社に良い事業シナジーがあると感じてもらえたことで、M&Aに至りました。

乾燥京野菜ブランド:OYAOYA
OYAOYA
OYAOYA 京都産の規格外野菜を使った乾燥野菜ブランドOYAOYA。
下谷

創業者の方は、会社を引き継いだ後も事業に関わり続けられるのでしょうか?

布田

これは色んなケースがありますね。例えば、OYAOYAでは、創業者が取締役CEOという形で残られています。また、案件によっては色々な事情で「もう事業に携わりたくない」という方もいらっしゃるので、その場合は事業から完全に離れる形を取っていますね。

下谷

なるほど。GOZENのマッチングサービスは、「事業を売りたい」という会社さんの要望から始まるのでしょうか?それとも「こういった事業を買いたい」という会社さんからの要望から始まるのでしょうか?

布田

弊社に関しては前者が多いですね。feast、OYAOYAは前者のパターンです。

例えば後者のパターンだと「日本の農業を盛り上げていきたいので、農業の事業を買いたい」というお問い合わせがあり、最適な農業の企業さんを探してマッチングをしています。

他のM&Aサービスにはない、GOZENの強み

下谷

GOZENさんの事業は、他のM&Aサービスと比べてどのような強みがあるのでしょうか?

布田

まず、GOZENが行っているような小さい規模のディールを仲介する企業って、ほぼないんです。なぜかというと、M&A事業は仲介手数料で売上を立てるため、大規模取引の方が仲介料も大きくなるからです。

そのため、「小さいけれど良いビジネスを見つけたいが、探せない」という買い手さんと、「事業を売りたいが、何をすればいいか分からない」というスモールビジネスの売り手さんが多くいらっしゃいます。この両者に対してサポートできるのが、GOZENの強みだと思っています。

布田

また、僕自身がソーシャルビジネス・スモールビジネスに詳しいので、取引先の事業が成長しそうなビジネスか、難しいビジネスかをしっかり見極めることができます

1つ取引が決まる度に、非営利団体に寄付を行っている理由

下谷

GOZENさんでは、M&Aの手数料の一部を非営利団体に寄付されていらっしゃいますよね。これはどういった理由で始められたのでしょうか?

布田

はい、GOZENはソーシャルM&A®ということで、「1deal, 1donation」という活動を行っています。これは、1つディールが決まると、仲介手数料の一部を非営利団体に寄付するという活動です。これにより、経済成長とソーシャルインパクトの両立を図っていきたいと思っています。

OYAOYAでのディールでは、食品ロス削減と子どもへの食の気付きを提供する、学生団体BohNoへ寄付を行った
布田

僕は、ある程度大きな経済規模がないと、社会を変えるインパクトが出せないと思っています。ただ、社会問題の中には事業化しにくい問題もありますよね。そのため、M&Aで経済成長をしつつ、その一部を非営利団体に寄付することで、ビジネスと非営利の両面から社会課題の解決を行っていけると考えています。

ソーシャルM&Aの存在を知ってもらい、社会起業家の選択肢を増やしたい

下谷

布田さんは、ご自身のnoteやyoutubeにて、ソーシャルM&A®についてかなり発信をされていらっしゃいますよね。これはどういった理由で行われているのでしょうか?

note(ノート)
布田尚大/ソーシャルM&A GOZEN|note ソーシャルビジネス・スモールビジネス特化のM&A仲介GOZEN代表/ボディポジティブなD2Cランジェリーブランドfeast経営とM&A、PMI /私たちの株式会社CFO/社会学修士/...
布田

これは、「ソーシャルM&A®」という手法があることを知ってもらいたいからですね。

社会起業家にとって、自分の事業はいわば自分の子どものようなものです。こうした事業を「売る」という考え自体がなかったり、できないと思われている方が多くいらっしゃいます。ただ、ちゃんと手順を踏んで計画を立てていけば、ソーシャルM&A®という手法で自分の事業を継承・拡大できるということを知ってもらいたいんです。

布田

M&Aってお金儲けのためだと思われがちですが、決してそんな事はなく、僕はM&Aは事業成長の手段だと思っています。

OYAOYAさんを引き継いだ貝印さんって、実は年商400億円もあるグローバル企業なんです。OYAOYA創業者の小島さんは、かねてより海外で京野菜の販売をしたいという想いがありましたが、これを単独で実現するためには、数年はかかってしまいます。これを貝印さんと一緒になったことで、創業わずか15ヵ月で海外への販路が圧倒的に早く開けるかもしれません。

こうした事例からも、事業成長という意味でM&Aは決してネガティブなものではないと思っています。

布田

また、事業を売ると、事業を売ったお金は創業者に入ってきます。そうなると金銭的自由が生まれ、次なるチャレンジができるようになったり、リスクを取って更なる挑戦が始められます。さらに、M&A先の会社に役員として入ることで、若いうちから大手企業の経営に携わる機会を得られます。

僕個人として起業家の方をすごくリスペクトしているので、そうした方々がもっと自由に・大きな事をできるといいなと考えています。

下谷

なるほど。M&Aと聞くとネガティブなイメージが先行していましたが、GOZENさんのビジネスモデルを聞いて、買い手も売り手も喜ぶM&Aがあるということを知りました。

布田

そうですね、社会にはハッピーなディールというものがあることを、もっと知ってもらいたいなと思います。

まとめ:GOZENは社会起業家の後押しにつながるM&Aサービスだった

今回は、ソーシャルビジネス・スモールビジネスに特化したM&Aサービス「GOZEN」を行う、布田さんにインタビューを行いました。

このインタビューを通して、布田さんは社会起業家やクリエイターへのリスペクトがとても強い方だと感じました。ご自身がソーシャルビジネスを行っていたこともあり、社会起業家の方がより自由に事業を行えるための手段として、GOZENを運営されています。自身のソーシャルビジネスを売ろうと考えている方は、ぜひGOZENさんに話を伺ってみてはいかがでしょうか?

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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