日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援資金やソーシャルビジネスへの取り組みを解説!

日本政策金融公庫とは、中小規模事業者・スタートアップ企業への資金援助を行う政策金融機関です。国の政策の下、適切な企業に適切な融資を行う事で、日本社会全体の発展を目指しています。

そんな日本政策金融公庫は、ソーシャルビジネスに積極的に取り組んでいる金融機関でもあります。ソーシャルビジネスとは、社会課題の解決を目的とした事業のことで、地方創生・環境問題・福祉や介護など様々な社会問題に対してビジネスから解決を目指していく事業です。今回の記事では、

  • なぜ日本政策金融公庫はソーシャルビジネスに積極的なのか
  • どうすれば日本政策金融公庫からソーシャルビジネス事業の融資を得られるのか
  • ソーシャルビジネスの資金調達における、日本政策金融公庫を利用するメリット・デメリット

などを解説していきます。

目次

日本政策金融公庫とは?

日本政策金融公庫とはその名の通り、『日本政府の政策に基づいて融資を行う、公的な金融機関」です。主に中小企業やNPO法人・農林水産者・ベンチャー企業などへの融資を行っています。日本政策金融公庫には、以下の3つの事業があります。

国民生活事業

事業を営むほとんどの人が利用できる、融資サービスや経営支援サービスを行っています。平均融資額は980万円と小口融資が主体で、融資先の約9割が従業員10人未満の小規模事業者です。

また、教育ローンも国民生活事業が担当しています。

農林水産事業

農林水産業に携わっている方へ、融資や経営支援・情報提供などを行っています。

中小企業事業

製造業を中心とした、中小企業向けの長期運営用の資金融資を行っています。平均融資額は1億3500万円で、返済期間が5年以上の長期融資を取り扱っています。

これらの3つの事業から、日本経済の発展と資金繰り悪化時のセーフティネットとしての役割を担っています。また、日本政策金融公庫は一般の銀行融資と比べて、審査を受けやすく、低金利であるという特徴があります。

なぜ日本政策金融公庫はソーシャルビジネスを積極的に支援している?

ではなぜ日本政策金融公庫は、ソーシャルビジネスにここまで積極的に支援しているのでしょうか?日本政策金融公庫のHPによると、「社会的課題の解決と同時に、新たな雇用の創出や地域社会の活性化に貢献するため」と記載されています。また、ソーシャルビジネスに関わる事業者は、30代以下の若年層が多いです。彼らは実績が少ないことからファンドレイジングに苦労する場合が多く、クラウドファンディング以外での資金調達に難を抱えています。そのため、日本政策金融公庫が若年層の社会事業の立ち上げをサポートしているそうです。

融資から日本社会を活性化していくことが目標の日本政策金融公庫と、社会課題解決のためのビジネスのソーシャルビジネス。両者の相性が非常に良いことから、年30%以上の増加率でソーシャルビジネスへの融資を推進しています。

日本政策金融公庫のソーシャルビジネスに対する取り組み

ここからは、実際に日本政策金融公庫が取り組んでいるソーシャルビジネスに対する事例集を紹介していきます。

ソーシャルビジネス企業への融資

ソーシャルビジネスを行う事業者向けに融資を行っています。無担保・無保証人で融資を受けることも可能で、最大7200万円の融資を受けることができます。ソーシャルビジネス支援資金については、下の項目で詳しく説明します。

ソーシャルビジネスの事業計画サポート

ソーシャルビジネス専用の事業計画策定ツール「ビジネスプラン見える化BOOK」を発行しています。このブックでは、社会課題の問題構造の洗い出し、ソーシャルインパクトを生み出す仕組みの構築、財源確保の方法、事業の立ち上げ方、目指す組織像などを見つけることができます。まさに、ソーシャルビジネスのための事業計画書作りサポートツールです。

ソーシャルビジネス講座の実施・知見記事の共有

日本政策金融公庫のHPでは、ソーシャルビジネスをテーマとした解説記事・動画などの講座を提供しています。ここでは、以下のようなソーシャルビジネス事業運営を学べる記事や講座が用意されています。

  • 事業計画の策定方法
  • ソーシャルビジネスの法的リスクマネジメント
  • 社会的インパクトの評価方法について
  • ソーシャルビジネスと経営戦略
  • ソーシャルビジネスの事業継続のポイント

ソーシャルビジネスに取り組む人同士を繋げるメディア『SBステーション』を運営

画像参照:https://www.jfc.go.jp/n/finance/social/sbs/

ソーシャルビジネスステーション(SBステーション)とは、ソーシャルビジネスに取り組む人同士が連携するための情報サイトです。社会的企業同士が協業して社会課題解決に取り組んでいる事例集を紹介したり、日本全国のNPO法人を纏めています。社会課題を連携・協業して解決を目指すことで、より大きなソーシャルインパクトを生み出すことを目的としています。

また、これからソーシャルビジネスに取り組もうとしている人向けに、ソーシャルビジネスとはどのようにおおkなっていくのかを記したコラム記事の発信も行っています。

日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援資金について、詳しく解説!

日本政策金融公庫では、NPO法人または「保育・介護サービス事業を行う方」「社会的課題の解決を目的とする事業を行う方」を対象に、ソーシャルビジネス支援資金を援助しています。このソーシャルビジネス支援資金の内容について、詳しく解説していきます。

融資を受けられる金額・利率・返済期間など

ソーシャルビジネス支援資金の使い道は、事業を行うために必要な設備資金・運転資金に限られます。融資限度額と返済期間は以下の通りです。

担保なし担保を不要とする融資を利用する方:4800万円
新創業融資制度を利用する方:3000万円(うち運転資金1500万円)
担保あり7200万円(うち運転資金4800万円)
ソーシャルビジネス支援資金の融資限度額
設備資金20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金7年以内(うち据置期間2年以内)
ソーシャルビジネス支援資金の返済期間

利率は「特別利率A」と「特別利率B」の2種類があります。

特別利率Aの対象

  • 認定NPO法人
  • 社会問題の解決を目的として事業を行う方

特別利率Bの対象

  • 保育・介護サービス事業を行う方

特別利率A・特別利率Bの年利は以下の通りです。

特別利率A特別利率B
担保を不要とする融資を利用される方(税務申告を2期終えている方)1.57% ~ 2.60%1.32% ~ 2.35%
新創業融資制度(無担保・無保証人)を利用される方(税務申告を2期終えていない方)1.87% ~ 2.90%1.62% ~ 2.65%
担保を提供する融資を利用される方0.62% ~ 2.25%0.40% ~ 2.00%
災害貸付、東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)、新型コロナウイルス感染症特別貸付または令和2年7月豪雨特別貸付(その他被害者を除く)を利用される方0.72% ~ 1.75%0.47% ~ 1.50%
令和5年5月1日時点での年利

融資の申請に必要な資料・申請方法

融資はこちらから申請できます。なお、申請にあたり必要な書類は以下の通りで、郵送での手続きの場合は「借入申込書(国民生活事業用)」も追加で必要となります。

個人営業の方最近2期分の申告決算書(申告されている方)
法人営業の方最近2期分の確定申告書・決算書(勘定科目明細書を含みます。)
最近の試算表(決算後6ヵ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方)
設備資金をお申込の場合見積書
はじめてご利用される方創業計画書(新たに事業を始める方または事業を開始して間もない方。ダウンロードはこちら
企業概要書(ダウンロードはこちら
法人の履歴事項全部証明書または登記簿謄本(法人営業の方)
運転免許証(両面)またはパスポート(顔写真のページおよび現住所等の記載のあるページ)のコピー
許認可証のコピー(飲食店などの許可・届出等が必要な事業を営んでいる方)
※創業計画書をご提出いただいた場合、企業概要書の提出は不要です。
ソーシャルビジネス支援資金の申請に必要な資料

ソーシャルビジネス支援資金の融資に通る確率は?

ソーシャルビジネス支援資金の融資成功率は不明ですが、日本政策金融公庫自体の融資成功率は50%~60%程度と言われています。自己資金がどれだけあるか、事業計画が適切か、借金や公共料金の支払い遅延がないか、返済能力があるか、などが見られるそうです。

ただし、ソーシャルビジネス関連の融資実績・融資金額共に右肩上がりであるため、日本政策金融公庫はソーシャルビジネスへ積極的に融資を行う意欲がある事が分かります。

ソーシャルビジネス支援資金と他の融資・助成金との違いを比較!

ソーシャルビジネスの融資には、以下の公募があります。

内容金額年利担保
京都信用金庫ソーシャル・グッド融資1000万円変動金利(2022年4月時点で0.9%)原則不要
銚子信用金庫ソーシャルビジネスローン「未来」1000万円変動金利原則不要
大阪商工信用金庫ソーシャルビジネスローン担保評価の範囲内(担保有)
500万円(担保無)
変動金利どちらも可能
ソーシャルビジネス融資の比較

ソーシャルビジネスの助成金・補助金には、以下の公募があります。

内容金額特徴
各都道府県・市町村のソーシャルビジネス助成金地域により異なる(数百万円程度の地域が多い)事業の活動範囲がその地域に限られることが多い
財団法人による助成金法人により異なる数が少なく、不定期
ソーシャルビジネスの助成金・補助金の比較

これらと比較した時、日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援資金のメリット・デメリットは以下のようになります。

ソーシャルビジネス支援資金のメリット

  • 融資額が大きい
  • 年利が固定である
  • 地域に縛られず事業を行う事が出来る
  • 通年通して継続的に募集をしている

ソーシャルビジネス支援資金のデメリット

  • 担保なしで融資を受ける場合、他の融資と比べて年利が高い傾向がある
  • その地域限定で事業を行う場合、地域の助成金・補助金の方が獲得しやすい場合がある

上記のファンドレイジングの他にも、クラウドファンディングや寄付金を募るなどの資金調達方法もあります。

ソーシャルビジネス支援資金に採択された事例を紹介!

では、実際にソーシャルビジネス支援資金に採択された事業は、どのような事例があるのでしょうか?ソーシャルビジネス支援資金に採択された事例の一覧を、以下の表に纏めてみました。

法人名事業内容
株式会社Ridilover社会課題の現場を知る「スタディーツアー」の提供
Rennovater株式会社空き家をリフォームし、住宅契約困難者に家を提供
NPO法人ひよこ会子育て支援施設・障碍者福祉施設の運営
NPO法人Learning for All子どもの学習支援・居場所支援事業
一般社団法人ペイシェントフッド人工透析の患者向けサイトの運営・透析患者の介護サポート活動
一般社団法人サステイナブル・サポート発達障碍・精神障碍を持った方の就労支援事業
ソーシャルビジネス支援資金に採択された事業一覧

こちらの表を見て分かる通り、株式会社・非営利法人に関わらず融資を受けることが可能です。また、事業収入がなく寄付金のみで収益を立てている事業者も、ソーシャルビジネス支援資金を受けることができます。

まとめ:日本政策金融公庫のソーシャルビジネス支援資金は、社会起業家には必見

今回は、日本政策金融公庫が行っている「ソーシャルビジネス支援資金」を解説してきました。ソーシャルビジネス支援資金は、株式会社でも非営利法人でも、ソーシャルビジネスを行っている事業者なら申請をする事が可能です。また、日本政策金融公庫から融資を受け、返済を行った実績を持つと、金融機関からの高い信用を獲得できます。そのため、今後ソーシャルビジネスで多額の融資を金融機関から受ける見込みがある方は、まずソーシャルビジネス支援資金に挑戦してみるのも良いかと思われます。

ソーシャルエッグでは、ソーシャルビジネスに関する知識や、最新のソーシャルビジネス情報、社会起業家へのインタビュー記事などを掲載しています。もしよろしければ、ぜひそちらもご覧ください。

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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