日本さばける塾 in 三番瀬を取材!魚をさばいて海の大切さを伝えるプロジェクトとは?

今回は、日本財団の「海と日本プロジェクト」の一環である、「日本さばける塾 in 三番瀬」を取材させて頂きました。

  • 海に関わる環境問題に興味のある方
  • 日本財団の取り組みについて知りたい方
  • 子供たちに海の大切さを伝えるイベントを企画している方

はぜひ読んでいただけたらと思います!

目次

日本さばける塾・日本さばけるプロジェクトとは?

日本さばける塾とは、全国各地で「魚をさばく」体験を提供しながら、海に関する社会問題を伝えていく活動です。主催は「一般社団法人 海のごちそう推進機構」、共催として「日本財団 海と日本プロジェクト」が行っています。

日本さばける塾では、日本各地で小学生を対象にして、これらの講座を実施しています。

  1. 海洋問題や海に住む生き物についての動画を見て、海の大切さを学ぶ
  2. 魚をさばくプロと一緒に実際に魚をさばき、命の大切さを学びつつ魚をさばく技術を継承する
  3. 地域の専門家の方から、地元の海の歴史や食文化を学ぶ

日本さばけるプロジェクトでは、日本さばける塾の他に、

  • プロの料理人が魚をさばく方法を教えるYoutubeチャンネル「さばけるチャンネル」
  • 魚をさばける人を増やす、SNSキャンペーン企画の実施

などを実施しています。魚をさばく技術を伝承するとともに、海洋問題に関する情報を発信し、海を守る人を増やすことを目的としています。

三番瀬とは?東京湾屈指の生態系を育む、1800haの広大な干潟

今回、日本さばける塾を行う「三番瀬(さんばんぜ)」は、千葉県船橋市・習志野市・市川市・浦安市にまたがる広大な干潟です。三番瀬の広さは約1800ha、小学校約1800個分に相当します。江戸時代には「御菜浦(おさいのうら)」と呼ばれ、ここで獲れた魚を将軍に献上する役目を果たしていた場所でもあります。

船橋から見た三番瀬の風景。奥には葛西の観覧車が見える。

三番瀬には、コメツキガニやオサガニ、ゴカイ、ヤドカリ、アラムシロ、ハゼ、アサリなど、139種類の底生生物が生息していると言われています。また、浅瀬ではスズキやカレイ、マハゼなど47種類の魚類が生息しているそうです。

これらの豊かな干潟のおかげで、船橋市では年間364トンのアサリが獲れるそうです。また、スズキの漁獲量は全国1位で、年間830トンも船橋市で漁獲されるそうです。

さらに、これらの豊かな干潟は、ユリカモメやスズガモ、ハマシギなどの水鳥たちの憩いの場にもなっています。特にミヤコドリは、日本に飛来する約半数が三番瀬に生息していると言われています。

今回は、生態系豊かな三番瀬の「ふなばし三番瀬環境学習館」にて、「日本さばける塾 in 三番瀬」を実施されました。

日本さばける塾 in 三番瀬を取材!体験型で海を学ぶプログラムとは?

「日本さばける塾 in 三番瀬」は、2023年8月27日(日)10:00 ~ 14:00に、ふなばし三番瀬環境学習館にて実施されました。主催は「一般社団法人 海のごちそう推進機構」「有限会社ディーポ」、共催は「日本財団 海と日本プロジェクト」、協力は「ふなばし三番瀬環境学習館」「株式会社アノニギワイ」となっています。

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今回のプログラムは、以下の進行で実施されました。

  1. 三番瀬の干潟の生き物に触れるフィールドワーク
  2. 三番瀬と海苔作りの繋がりを学ぶ講義と、海苔すき体験
  3. 実際に魚をさばいて、自分たちでさばいた魚を食べてみる
  4. 三番瀬の歴史について、専門家から学ぶ講義

参加者は、小学4年生~小学6年生の子供たちが10名来ていました。小学生にもかかわらず、6割の子どもたちが家庭科の授業や親御さんと一緒に、魚をさばいた経験があるそうです。これにはとても驚きました。

また、今回は以下の4名の方が講師としてご参加されました。

  • フィールドワーク講師:小澤 鷹弥さん(ふなばし三番瀬環境学習館 コミュニケーター)
  • 海苔講師:藤原 孝夫さん(市川市行徳漁業組合 元専務理事)
  • さばき講師:大野 隆幸さん(定食カフェ ラハン オーナー)
  • 三番瀬歴史講師:佐野 郷美さん(東邦大学理学部 非常勤講師)

それでは、各プログラムの内容をお伝えしていきたいと思います!

①:三番瀬の干潟でのフィールドワークで、海の大切さを体感

まず最初に、三番瀬の干潟に出てフィールドワークが始まりました。ふなばし三番瀬環境学習館 コミュニケーターの小澤さんが講師として、子供たちにわかりやすいよう三番瀬の魅力を解説しながら、フィールドワークが行われました。

まずは、ふなばし三番瀬海浜公園の展望デッキにみんなで登り、三番瀬を見渡しました。ここから見える葛西臨海公園やディズニーランド・船橋・習志野まで全てが三番瀬だと言う事を知り、その広さに参加者一同とても驚いていました。

その後、干潟に入り、三番瀬に生息している生物を捕まえて観察しました。干潟の上にある無数のつぶつぶ、これらはオサガニやコメツキガニなどが食事の際に作り出した砂だんごだそうです。

砂浜に無数に点在する砂だんごは、カニたちが食事をした際に排出されたもの

また、この画像に見えるつぶつぶは、全てがヤドカリたちです。

画像内に映っている石のようなつぶつぶは、すべてヤドカリたち

それ以外にも、様々な生き物たちを発見することができ、三番瀬では多種多様な生態系が育まれている事を学ぶことができました。子供たちも夢中で干潟を掘りながら、生き物を見つけると「いたー!」と楽しそうにしていました。

小澤さんが子ども達が興味を持ったことを分かりやすく解説してくださりました

②:海苔すき体験・三番瀬と海苔作りの歴史を学ぶ

干潟でのフィールドワークから戻ると、講座の部屋には海苔すきの伝統器具が用意されていました。ここからは、市川市行徳漁業組合 元専務理事で海苔漁師でもあった、藤原さんが講師として海苔すきと三番瀬の海苔漁について教えてくださりました。

三番瀬は元々、海苔の養殖が盛んな地域だったそうです。海苔作りには海水の塩分濃度が大きな役割を果たしますが、東京湾の塩分濃度は淡水と海水が混ざるため、海苔作りに最適だったそうです。今でも船橋産の海苔は、日本最高級クラスの価格で取引されているそうです。

そんな三番瀬の海苔作りも、東京湾の埋め立てと温暖化による海水温上昇によって激減。現在はわずか3軒6名しか海苔漁師は残っていないそうです。三番瀬の海苔作りを未来に継承するため、この講座を通して子供たちに海苔作りの魅力を知ってもらえたらと、藤原さんは仰っていました。

海苔の歴史のお話が終わると、実際に海苔をすいてみる体験がスタート!まずは海藻の海苔をまな板の上で細かく刻み、海苔の佃煮のような形状にしていきます。次に、細かくした海苔を簀(すのこ)の上に乗せ、ふるいにかけていきます。すると、良く見た事のある1枚の海苔が出来上がりました!子供たちはとても真剣な眼差しで海苔すきを行っていました。

子供たちが海苔すき体験を行う様子

三番瀬の海苔の歴史と海苔すきを学んだ子供たちからは、「船橋で海苔が作られている事を初めて知った」「美味しい海苔を食べるために、温暖化を止めることが大事だと思った」などの意見を伺う事ができました。

③:実際に魚をさばいてみる・さばいた魚を食べる

ここからがさばける塾の本題、実際に魚をさばく講座です。江東区森下にて「定食カフェ ラハン」のオーナーをされている大野さんが、スズキをさばく実演をしてくださりました。スズキは千葉県が漁獲量1位の魚。まな板からはみ出る程大きなスズキに、ススッと包丁を入れていき、綺麗に3枚に下ろしていきます。大野さんの見事なさばきの腕に、子供たちと保護者も身を乗り出して学んでいました。

大野さんが魚をさばく様子を熱心に観察する子ども達

大野さんからスズキのさばき方を教わった後は、実際に子供たちがさばくターン!子供たち用に、小さめの魚としてフッコ(スズキの子ども)が1人1尾渡され、自分の手で魚をさばいていきます。包丁の入れ方に苦戦しながらも、スタッフの手を借りつつ、約1時間かけて全員がフッコをさばききりました!

子どもたちが自ら魚をさばいている様子

自分たちでさばいたフッコは、ご飯やきゅうり、三番瀬の海苔と一緒に包んで、手巻き寿司にしていただきました。子供たちは、自分でさばいた魚を美味しそうに頬張っていました。親御さんも、お子さんから手巻き寿司を貰い、子どもたちがさばいた新鮮な魚を満足げに食されていました。

また、フッコのさばいたあらは、あら汁として参加者の方々に振舞われました。さらに、三番瀬特産のホンビノスガイを蒸した酒蒸しも振舞われ、お子さん・親御さん共に大満足の試食会でした。

自分たちでさばいた魚を味わう子ども達

今回のさばき体験を通して、子供たちからは「魚をさばくのは大変だったけど、美味しかった」「また家で魚をさばいてみたい」といった声を聞く事ができました。また、親御さんからは「1人で魚をさばいている姿を見て、成長を感じました」「次は家で一緒に違う魚をさばいてみようと思います」といった声も伺うことができ、親子ともに大満足のさばき会だったと感じました。

④:三番瀬の環境について学ぶ

最後に、東邦大学理学部非常勤講師の佐野さんが、三番瀬の生態系や三番瀬を取り巻く環境問題について教えてくださりました。三番瀬は大きな生物が入って来れない干潟のため、様々な生物が産卵場所として活用し、豊かな生態系を育んでいるそうです。また、干潟に住むアサリや貝類は水を浄化する力を持っており、東京湾の水質改善にも役立っているそうです。

しかし、埋め立てや工場排水の排出、地球温暖化などの影響で、三番瀬を取り巻く環境は年々悪化しているそうです。赤潮・青潮の発生や温暖化の影響で、ホンビノスガイや海苔が三番瀬では取れなくなってきています。今後も美味しい魚を食べ続けられるように、こうした海の問題を知り、自らできることをしてみようと仰っていました。

干潟で生物に触れ、自分たちで魚をさばいた経験を受けて、子供たちは真剣に佐野さんの話を聞いていました。子供からは「ごみ拾いをして、海を綺麗にしてあげようと思った」という声を伺うことができました。

最後に、プログラムをすべて受講したことを示す、「さばけるマスターカード」が子ども達に進呈されました。

日本さばける塾 in 三番瀬に参加した子供たち・保護者からの感想

フィールドワークから魚をさばき、三番瀬の環境を知る所まで、約5時間かけて子どもたちに海の大切さを学んでいきました。今回参加した子どもたちからは、こんな感想を伺うことができました。

⼩学5年⽣の女の子

干潟にはたくさんの生き物がいて、私たちを守ってくれていることがわかった。これから干潟を大切にしていきたい

⼩学6年⽣の女の子

学校で習ったより、(海や干潟)にはいろいろな問題があるのだと思った

⼩学4年⽣の男の子

干潟や生き物のことがもっと知りたい

また、子どもたちの親御さんからは、以下のような声を伺いました。

30代男性

海のある千葉県に住んでいるのいるのにこんなに知らないことがあるのかと勉強になりました。誇るべき千葉の海苔や干潟を守るためにできることを考えたいと思います

40代女性

藤原さんや佐野さんのような方が守ってきた干潟というものを当たり前に考えてきたなと思いました。子どもと一緒に干潟をことを考えます

私自身も本プログラムを通して、干潟に住む生物の多さにとても驚きました。都会のすぐ近くで、これだけ豊かな生態系がある事を初めて知り、本プログラムに参加する前よりも海が身近になったと感じます。また、子どもたちが奮闘して魚をさばいている姿を見て、大人である私も魚をさばけるようにならなくちゃと思いました。

まとめ:日本さばける塾は、三番瀬だけでなく日本全国で実施中!

今回は、千葉県船橋市の三番瀬にて行われた、日本さばける塾 in 三番瀬を取材してきました!日本さばける塾では、魚をさばく経験や豊富な知識を持った講師による解説のおかげで、水族館や資料館では得られない「海の楽しさ」を実感できるイベントだと感じました。また、子ども達が魚をさばく経験をすることで料理が好きになっていき、帰宅後に家庭で料理を手伝ってくれるようになるだろうなと思いました。

日本さばける塾は、全国47都道府県を周って開催されています。ぜひ本記事を読んで参加してみたいと思った方は、こちらから今後の開催予定をご確認ください。

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日本さばけるプロジェクト 日本さばけるプロジェクトは、魚をさばけることへの憧れや喜びという共感を掘り起こし、日本中がもっと魚に触れ、味わいたくなる新たな食のムーブメントを切り開きます。

ソーシャルエッグでは、こうした社会に良い活動や事業にインタビューを行い、多くの人にソーシャルグッドな事例を知ってもらうことを目指しています。他にも様々なソーシャルビジネスを行われている方にインタビューをしていますので、ぜひそちらも読んでみて下さいね!

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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