コボレナ「規格外野菜に本質から向き合う」山岡優斗さんインタビュー

今回は、規格外・規格内野菜を混在させた野菜配送サービス「コボレナ」を立ち上げた、山岡優斗さんにインタビューを行いました。

  • フードロスや地方創生に興味のある方
  • クラウドファンディングを実施しようと考えている方
  • 農家と一緒になって事業を併走していきたいと考えている方

はぜひ読んでいただけたらと思います!

目次

プロフィール

【名前】
山岡 優斗

【年齢】
31歳(2023年6月現在)

【経歴】
広島大学経済学部 ⇒ 広島大学法学部(転学部) ⇒ 岡山大学大学院法務研究科 ⇒ 倉敷化工株式会社 ⇒ 株式会社ウェイブ ⇒ 株式会社アノニギワイを創業

【携わっている主な事業内容】
コボレナ:規格外・規格内野菜を混在させた野菜配送サービス
いさり灯:函館圏で後継者を探す「探し手」と、事業を継ぎたい「担い手」をマッチングするプラットフォーム

経済学部から法学部へ転学部、エンタメ会社から地方創生事業を起業、異色の経歴を持つ山岡さん

下谷

本日はよろしくお願い致します。

ではまず、山岡さんの経歴について、お聞かせ頂いてもよろしいでしょうか?

山岡

はい。大学時代は経済学部に通っていて、元々ビジネスや起業には興味を持っていました。ただ、大学入学後に法律の面白さに気付き、3年次から法学部へ転学部しました。

そこからは、法律にも経営にも精通しているビジネスパーソンになりたいと考え、法律の勉強を重点的に行ってきました。

山岡

社会人として最初のキャリアは、車だったらマツダが好きという理由で、地元岡山にある倉敷化工株式会社という、マツダのグループ会社に法務担当として入社しました。ただ、周りの従業員の方々は、自分よりもっと車に対する熱量が高い方ばかりで…。

自分もそれくらいの熱量を持って本当に好きな業界で働きたいと考え、エンタメ系の会社(株式会社ウェイブ)に転職しました。そのウェイブにて、今一緒に事業を行ってくれている豊島と出会い、2021年7月にアノニギワイを創業したという流れですね。

畑のフードロスを解決する!規格外・規格内野菜を混在させた産地直送サービス「コボレナ」とは?

下谷

ありがとうございます。では、本日の主題である、山岡さんが手がけられているサービス「コボレナ」についてお伺いさせて頂ければと思います。

山岡

はい、コボレナは『規格内・規格外農産物が混在する「畑の今」を届けるサービス』です。規格外の野菜に関して、よくある勘違いが3つあります。

山岡

まず1つ目は、「規格外野菜は定期的にできるわけではない」こと。

農家さんはなるべく規格外の野菜を作らないように努力されています。天候不順や気温の問題などで、まったく規格外が出ない時もあれば、たくさん出てしまう時もあります。そのため、定期的に規格外野菜を買い取るといったことはできません。

山岡

2つ目は、「規格外野菜は必ずしもおいしいとは限らない」こと。

もちろん食べることはできますが、規格内の野菜と比べて味が変わったり、本来のおいしさが担保されないことがあります。

山岡

3つ目は、「規格外野菜を活用したいと思っている農家さんは少ない」こと。

規格外の野菜を取り扱うためには、仕分けや梱包に想像以上のコストがかかります。規格内なら指定のダンボールに入れればぎっしり綺麗に梱包できるのですが、規格外だと配送に耐えうる箱詰めに、かなりの労力が必要になります。また、丁寧に土を取って、余分な根や葉を切って、袋詰めして、という作業にも時間がかかります。さらに直売の場合は値段まで自分で決めて、直売所等に運んだり、売れ行きを管理しなければいけません。農家さんはただでさえ人手不足なのに、規格外野菜まで手を回している余裕がない所が多いんです。

山岡

そこでコボレナでは、「なるべく農家さんの労力を減らして、規格外野菜を取り扱える仕組み」を考案しました。

山岡

その一つが、あえて必要以上に土を落とさず梱包・配送することです。そうすることで、生産者は仕分けや洗浄のコストを削減することができます。

スーパーに並んでいるような綺麗で形の整ったものというよりは、ちょっと土がついていたり形が悪かったりする野菜を見て、今の畑の状態を知ってもらう体験を生みたいなと思っています。

農家さんの負担にもならないですし、消費者も畑を感じられるような、Win-Winな状態にしたいですね。それに僕はちょっと土が付いていた方が、美味しそうな野菜だなと思うんです(笑)

畑で採れたての野菜をコボレナでは提供している
山岡

また、コボレナは、農家の裁量により、畑のフードロス品を50%まで箱の中に同梱できるサービスにしています。

農家さんの裁量に任せたのは、畑のフードロス品の生産が望まれておらず、供給が安定しないという現実があるからです。このサービスにより、定期的な配送の中で畑のフードロス品の有無や量の増減から、その時期の畑の状況を消費者が理解できるようになり、畑のフードロスがどういった問題なのか理解が広まることを期待しています。

当社では、この取り組みを畑のフードロス品の利活用に留まらず、消費者のリテラシー向上という新たな視点に基づくものと位置づけています。

下谷

コボレナから送られてくる野菜は、季節ごとに異なる野菜が送られてくるのでしょうか?

山岡

そうですね。コボレナでは、北海道から徳島まで、様々な地域の農家さんと提携をしています。

規格外の野菜はいつ出るか分からなく、季節によっても旬の野菜は異なるため、色んな地域の色んな農家さんと提携して、その時期に出せる農家さんから出してもらう形にしています。その時採れる野菜で一番美味しい物を、消費者の方に届けられるようにしていますね。これも畑の今を知ってもらう体験の一環と考えています。

コボレナは、企業の福利厚生の一環としても導入されている

下谷

コボレナさんのサービス内容を拝見した際、企業の福利厚生サービスとして展開されているのが、とても面白い切り口だと思いました。

山岡

そうなんです。上記で説明した通り、規格外野菜を取り扱う上では「コストが高くつく」という問題が付きまといます。そのため、小さい箱で1つ1つ梱包するような、小ロットでの販売はビジネスとして成り立たせるのが難しいんです。

山岡

そこでコボレナでは、企業に福利厚生として規格外・規格内野菜を購入して頂こうと考えています。

社員の健康促進やCSR活動にもなりますし、一度にたくさん野菜を購入して頂けるので、コストを抑えることができますし、農家さんの箱詰めの負担も軽減することができます。

コボレナの企業向けプラン
下谷

企業側も、社員が健康になれば保険料の削減につながるので、導入するメリットはありますよね。

山岡

そうなんですよ。それ以外にも、産直の野菜を定期的に貰えるということが、社員の離職率低下・採用時のPRなどに一役買うことになると考えています。

函館の人口減少を目の当たりにして、株式会社アノニギワイを創業した

下谷

株式会社アノニギワイでは、フードロスや地域活性化に取り組んでいますが、この分野で事業を行おうと思ったのはなぜでしょうか?

山岡

まず自分で会社を興すなら、何か社会のためにやりたいと思っていました。

そこで何をしようかと考えていた時、豊島の地元の函館が人口減少の危機にあるということを知りました。観光客は来るが地元の人はどんどんと減っていて、さらにコロナ禍で市場や商店街に全然人がいなくなっている。

この現状を目の当たりにして、まずは函館の問題を解決しようと思い、アノニギワイの最初の事業「いさり灯」をスタートしました。

山岡

いさり灯は、函館圏で後継者を探している事業主と、事業を継承したい人をマッチングするサービスです。

函館では、「人がいなくなる ⇒ 事業がなくなる ⇒ 働く場所がなくなる ⇒ さらに人が流出する」という循環に陥っています。函館に住みたい・帰りたいという声は多く聞きますが、帰らない理由の多くが「仕事がないから」でした。ただ、「函館にこんな仕事があるけど、引き継いでみたい?」と聞くと、やってみたいと答える方は少なからずいらっしゃいます。そこで、いさり灯では、函館で廃業になってしまう事業を、後継者に託すサービスを展開しています。

いさり灯にて函館の事業者と話している様子

農家から信頼を得るために、何度も足を運んだ

下谷

なるほど、アノニギワイは地域活性化を目的として創業されたんですね。

そこからどういったきっかけで、規格外野菜を取り扱うようになったのでしょうか?

山岡

僕自身、元々食に興味がありました。なにより美味しい物を食べるのが大好きで(笑)アノニギワイは地域活性化から社会貢献を実現したいねという会社なので、それと食材を組み合わせられたら最高だなと。

山岡

最初は、魚が好きだったので魚×地域の事業をやりたいなと思っていたんです。ただ、自分が兼業でアノニギワイの仕事を行っていることから、鮮度が落ちやすい魚を取り扱うのは難しいと感じました。一方で野菜も大好きだったので、まずは野菜からできたら良いなと思い、野菜を取り扱うようになりました。

下谷

野菜を取り扱うにあたって、農家さんからの信頼はどのように獲得していったのでしょうか?

山岡

知り合いからご紹介いただくこともありますが、それ以外はインターネットで発信されている農家さんに、地道に連絡して会いに行って、信頼関係を築いて、また会いに行っての繰り返しですね。それで一緒にやってくれるという方を見つけて、スタートしました。最初は突き返されることが多いんですけど(笑)

山岡

やっぱり東京から来た若い人が「規格外野菜を何とかしたい」と言って来ても、なかなか話を聞いてもらえるまで大変だったりしますね。なので、直接会いに行くことがとても大事だと思います。この間は奄美大島に行ったんですが、一回も海に入らずずっと山の中を走っていました(笑)

クラウドファンディングを実施、その反響は?

下谷

コボレナさんでは、2023年6月1日からクラウドファンディングを行っていますよね。このクラウドファンディングの目的を教えて頂けますか?

山岡

はい、クラウドファンディング自体はCAMPFIRE自社サイトで行っています。

CAMPFIREさんではありがたいことに、社会問題と向き合っていることを認めて頂き、GoodMorningに掲載して頂きました。

山岡

クラウドファンディングを行った一番の目的は、コボレナを始めるに当たり必要な、新規顧客獲得や提携農家さん拡充のための資金を集めることでした。ただ、実は副次的な目的として、規格外野菜を販売する流れを農家さんに体感してもらうこともあります。

農家さんには、そもそも規格外の野菜を売っていいのかという心理的ハードルがありました。そこで、規格外野菜に対して一般の人から、これだけ需要があることを伝えたかったんです。

下谷

なるほど。クラウドファンディングを始めて、農家さんからの反応はどうでしたか?

山岡

農家さんからはびっくりしたという反応が多かったです。規格外野菜にちゃんとお金が集まるんだと。

また、クラウドファンディングをしてくれた人の中で、「個人向けに定期配送をしてほしい」という意見を何件か頂きました。こうした方々向けに、何かサービスを考えていきたいと思っています。

今後は、農家が手間をかけずに販路拡大ができるお手伝いをしていきたい

下谷

コボレナさんとしては、今後はサービスを拡大しようと考えていらっしゃるのでしょうか?

山岡

そうですね、クラウドファンディングを実施してみて、農家さん的に新しい販路が増えるのが嬉しいという声がありました。

「今まではJAや直売所にしか卸していなかったけど、インターネットでも販売してみたかった。ただインターネットのやり方が分からなかったが、コボレナさんに依頼してみたら楽に新しい販路が増えて嬉しい。」そんな意見を頂きました。

山岡

そういう意味では今後は、農家さんの手間を増やさず販路を増やしていけるような事業として、拡大していけたらと思っています。

社会問題に向き合うためには、徹底的に現場に足を運び、問題の原因を追求することが大切

下谷

ここまで、ありがとうございました。

最後に、これからソーシャルビジネスを始めていこうと思っている方に、山岡さんからのアドバイスを頂けますか?

山岡

僕はコボレナを始める前まで、すごい勘違いをしていました。とりあえず規格外野菜を扱っておけば、農家さんも喜ぶし、消費者のためにもなるだろうと。でも実際はそんなことはなくて、現場を見てみると規格外野菜が取り扱えない原因がいくつもありました。

山岡

ここからも分かる通り、机上で考えているだけでは、問題の本質は見えてきません。実際に足を運び、自分の目で向き合うことが、何よりも大切です。これから何か社会問題を解決したい!と思っている方は、まずはその問題の現場に足を踏み入れてみることをおすすめします。

下谷

実際にコボレナで、社会課題の本質に向き合ってきた山岡さんだからこそ伝えられる言葉ですね。本日はありがとうございました。

まとめ:コボレナは、規格外野菜の問題に深く向き合ったことで生まれた事業だった

今回は、規格外・規格内野菜を混在させた野菜配送サービス「コボレナ」を立ち上げた、山岡優斗さんにインタビューを行いました。

山岡さんは、毎週のように全国各地の農家さんに足を運んで、その地の規格外野菜に向き合っています。また、山岡さん自身も千葉の畑で野菜を栽培するほど情熱を持っていらっしゃいます。そんな山岡さんが、今後コボレナをどのように展開させていくのか、とても楽しみです。

ソーシャルエッグでは、ソーシャルビジネスを行っている人・社会起業家の記事が他にもたくさん用意しています。ソーシャルビジネスに興味がある方は、ぜひ他の記事も読んでみて下さいね!

よかったらシェアしてね!

この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

目次