ソーシャルビジネスの課題とは?課題点と解決策・成功事例の企業を解説!

ソーシャルビジネスとは、社会課題の解決を目的としたビジネスのことです。日本では2000年初め頃に認知されはじめ、その後NPO法人が生まれ、2010年代には企業がソーシャルビジネスを行う事例も増えてきました。その一方で、ソーシャルビジネスが抱える課題点はまだまだたくさんあります。

そこで本記事では、ソーシャルビジネスが抱える課題点を解説しながら、その解決策・上手く行っている企業の例を紹介していきます。

目次

ソーシャルビジネスの課題①:認知度が低い

「ソーシャルビジネス」という言葉自体、まだ日本社会での認知度は高くありません。1998年に施行された特定非営利活動法から始まったNPO法人は、今では80%以上の知名度を得ています。しかし、2010年初頭頃から広がってきたソーシャルビジネスは、日本ではまだ知名度が高くないのが現状です。

また、日本では「社会貢献への取り組みは、無償のボランティアとして行うもの」という価値観が根強いです。そのため、「ビジネスとして社会課題を解決する」と伝えても、お金儲けのために搾取していると見られがちです。だからこそソーシャルビジネスを行う事業者は、自らの事業が生み出すソーシャルインパクトを丁寧に説明し、社会問題解決・社会貢献を第一目標としてビジネスを行っていることを理解してもらう必要があります。

ソーシャルインパクト:事業がどれだけ社会課題を解決したのかを測る指標。例えば、フードロス事業の場合「年間300トンのフードロスを削減しました」といった具合。

認知度が低いという問題は、後述のすべての課題に影響を与えています。認知度が低ければ、人もお金も集まらなく、顧客も集めにくいです。また、認知度が低いままだと「ソーシャルビジネスを始めてみよう」と思う人も増えず、新しいイノベーションを起こすソーシャルアントレプレナー(社会起業家)が生まれにくくなってしまいます。多くの社会問題を解決するためには、多くのソーシャルアントレプレナーが出てくる必要があるので、認知度の向上はソーシャルビジネスの喫緊の課題と言えます。

ソーシャルビジネスの課題②:事業化の難易度が高い

ソーシャルビジネスとは「社会課題をビジネスにする」分野です。社会課題とは基本的に、「儲からないから放置されているもの」であり、これを利益が出る形に構築するのはとても難しいです。自らの事業のみで収益を立てている(助成金や寄付などを貰っていない)ソーシャルビジネスの場合、

  • 生産コストを下げて通常商品よりも安く提供する
  • コストは高くなるが、その分付加価値を付けて、高単価で販売する

の方法で利益を生み出していることが多いです。

解決策:生産コストを下げて通常商品よりも安く提供する

このタイプのソーシャルビジネスは、従来不要とされて捨てられているものを、安価に仕入れて販売していることが多いです。例えば、「Kuradashi」や「ロスゼロ」、「TABETE」のようなフードロス解決事業は、賞味期限間近や規格外商品・傷物などを安価に仕入れて、安価で販売を行っています。

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また、「コル」や「Rin」、「eye for three」といったアップサイクル事業は、従来廃棄されてしまう商品を安価に仕入れ、アップサイクルすることで別の商品として販売しています。

アップサイクル:廃棄予定の製品を加工し、新たな別の製品に生まれ変わらせること。

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解決策:コストは高くなるが、その分付加価値を付けて高単価で販売する

解決したい社会課題の中には、どうしてもコストを下げられないものもあります。例えば、障がいを持った方に雇用を生み出したい場合は、障がいを持った方にきちんと給料が出るビジネスモデルにする必要がありますし、海外の貧困問題を解決したい場合は、貧困層の方が作った商品をより高い金額で買い取ってあげる必要があります。

こういった社会課題の場合、「コストを下げられない = 販売価格が高くなる」ので、価格に見合った付加価値を付ける必要があります。例えば「AMOMA」では、ミャンマーの農家が作ったハーブを、専門家監修の元「妊婦の母乳育児向けハーブティー」として、高単価でも需要がある形に作り替えています。また外国人が日本で家を借りられない問題に取り組む「ボーダレスハウス」は、日本人と外国人のシェアハウスという形を取る事で、国際交流体験という付加価値を生み出し、価格以外で顧客に選ばれるポイントを創り出しています。

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ソーシャルビジネスの課題③:資金不足

ソーシャルビジネスは利益が出にくい事業形態のため、資金がギリギリになりがちです。事業をスケールしないと大きなソーシャルインパクトを出す事はできないですが、ソーシャルビジネスの認知度が低いこと、利益が出にくい事業形態なことから、一般の銀行から融資を得ることは難しいのが現状です。

また、日本は海外と比べて寄付文化が根付いていないこともあり、寄付から多額の運営資金を集めることも難しいと言わざるを得ません。これらの理由から、ソーシャルビジネスの事業は資金不足に陥りやすいです。

解決策:ソーシャルビジネスへの融資に積極的な公庫や銀行、補助金を活用する

ソーシャルビジネスが利益が出にくい事業だとしても、積極的に融資に乗ってくれる場所はあります。例えば、日本政策金融公庫が運営する「ソーシャルビジネス支援資金」は、社会問題解決を目的とする事業に最大7200万円の融資を行っています。また、京都信用金庫の「京信ソーシャル・グッド融資」や銚子信用金庫の「ソーシャルビジネスローン未来」など、地域の銀行が運営するソーシャルビジネスへの融資枠も存在します。

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また、国や地方自治体がソーシャルビジネス事業者への補助金・助成金を出しているケースも存在します。どんな補助金・助成金が活用できるのかは、年や地域ごとによって異なるため、Scalarのような補助金・助成金の申請に特化したサービスを利用してみるのも手だと思います。あるいは、地元の役所に足を運んで対象の補助金がないか相談してみると、ネットにはない情報を教えてくれることもあります。

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解決策:クラウドファンディングを行う

資金調達と知名度向上の両者を同時に解決できる方法として、クラウドファンディングがあります。大手のクラウドファンディングサイトは月間3850万PVにもなり、登録するだけで多くの新規顧客の目に留まる可能性があります。ただし、魅力的なリターン品の設定、初動のPV数獲得への戦略立て、顧客を引き寄せる画像やコピーの作成など、クラウドファンディングの成功は簡単にできるものではなく、多くの専門の知識が必要となります。

ただし、ソーシャルグッドな活動を専門で取り扱う「For Good」や、社会課題と向き合う人のためのクラウドファンディング「GoodMornig」など、ソーシャルビジネスを積極的に支援してくれるサイトもあるため、資金調達の手段として候補に入れておくと良いと思います。

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ソーシャルビジネスの課題④:人材不足

ソーシャルビジネスの多くの企業は、良い人材の確保に苦労しています。ソーシャルビジネスは売上が立ちにくい事業形態のため、コストを削減するために人件費を圧縮する傾向にあります。つまり、少ない人数で事業を運営することになるため、必然的に優秀な人材が求められます。ただ、優秀な人材であっても経費削減のため、高い報酬を渡すことは難しいのが現状です。

そのため、事業の掲げる「理念」に共感するメンバーを率先して集めることが大切です。「環境破壊を防ぐ」「教育格差を是正する」といった事業の理念に共感してくれた人材ならば、高い報酬よりも社会課題の解決が仕事のモチベーションになります。理念や価値観の一致は、採用時に何よりも重視する点です。

解決策:学生インターンを雇うことで、優秀な人材を早期に獲得する

大学生を積極的に雇い、優秀で価値観のある学生をそのまま雇う法人はいくつか存在します。「カタリバ」は学生からの人気の高い法人で、大学生がボランティアスタッフとして高校に訪問し、キャリア教育を行っています。この活動でカタリバの事業の魅力を知った学生が、そのままカタリバに就職するということも少なくないです。

また、ソーシャルグッドな行動をコインとして見える化する事業を手がける「ActCoin」は、企業内部で学生団体「actcoin for youth」を持っています。学生団体のメンバーには、社員がイベントの行い方や集客の方法などを教えており、学生のうちから人材育成を行っています。

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解決策:代表がSNSやWEB上で、積極的に想いを発信する

ソーシャルビジネスの企業は、資金不足のため広告費を出して人材を集めるといったことが難しいです。そのため、代表自ら自分が事業にかける想いを発信し、共感者を集めていくことが大事です。TwitterやFacebook、note、自社のHP上などで、事業の理念や自分の価値観、なぜこの社会課題を解決したいと思ったのかなどを積極的に発信し続けましょう。自分の想いを発信し続けることで、これに共感した人がプロボノとして事業を助けてくれるかもしれません。

プロボノ:何らかの専門技能を持っていて、無償で手伝いをしてくれる人のこと。プログラミング・経営コンサルティング・デザインなど、様々なスキルを持った人がプロボノとして事業のサポートを行っている。

ソーシャルM&A®のGOZENや、病児保育のFlorenceなどは、WEB上での発信を積極的に行っている事例です。

note(ノート)
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まとめ:ソーシャルビジネスには、通常のビジネスとは異なった特有の課題がある

ソーシャルビジネスの課題を簡単に纏めると、「認知度が低い」「事業化の難易度が高い」「資金不足」「人材不足」の4つです。社会課題解決をビジネスにするには、難しい事や大変な事はたくさんありますが、それを乗り越えた先に社会起業家の目指す社会があると思います。より良い社会を目指して活動していく社会起業家を、ソーシャルエッグはこれからも応援していきます。

ソーシャルエッグでは、様々な社会起業家にインタビューを行い、事業にかける想いを纏め、発信しています。ソーシャルビジネスに興味のある方は、ぜひ先達の方々の話を読んでみて、起業の糧にして頂ければ嬉しいです。

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この記事の編集者

下谷 航希のアバター 下谷 航希 編集長

現在25歳。大学3年生の頃に子ども食堂の運営に携わり、社会貢献をしている人たちが大変な思いをしながら社会貢献活動をしていることを知る。その後、地方創生ツアーやメンタルケアアプリ制作などを行い、2023年に社会課題解決に尽力する人たちの課題を解決するメディア「ソーシャルエッグ」を立ち上げ。現在はソーシャルエッグのインタビューやメディア運営、学生へのソーシャルビジネス講座などを行っている。

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